面白い日本電産の言い分

4月23日、日本電産株式会社の社長が「休みたいなら辞めれば良い」と発言したらしい。

 「休みたいならやめればいい」――。日本電産永守重信社長は23日、記者会見で「社員全員が休日返上で働く企業だから成長できるし給料も上がる。たっぷり休んで、結果的に会社が傾いて人員整理するのでは意味がない」と持論を展開。10年間で売上高が6倍超という成長の原動力が社員の「ハードワーク」にあることを強調した。


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 今後も積極的な買収戦略を進め、10年度に売上高1兆円、15年度に2兆円に押し上げる青写真も披露。「成長しているからこそ休みが無くても優秀な技術者がどんどん転職してきてくれている」と現路線に自信をみせた。

これを受けて26日、連合会長が批判

連合(日本労働組合総連合会)の高木剛会長は2008年4月26日、東京都内で開かれたメーデー中央大会で、「休みたいなら辞めればよい」と発言したとされる日本電産永守重信社長を強く批判した。高木会長は「言語道断。労働基準法が雇用主に何を求めていると思っているのか」と、同社長の姿勢を非難。大会に出席していた舛添要一厚労相は「きちんと調査する」と応じた。


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 高木会長は、「仕事と生活の両立」を指す「ワーク・ライフ・バランス」の必要性を強調する中で、反面教師として日本電産社長の発言に言及。「休みたければ辞めればいい」発言については「この会社の時間外・休日労働の実態を調べてみたい」とした上で、「休日返上で働くから成長できる」との発言に対しては


  「まさに言語道断。労働基準法という法律があることを、また、労働基準法が雇用主に何を求めていると思っているのか、どのように認識されているのか。ぜひ問いただしてみないといけない、そんな怒りの思いを持って、この日本電産のニュースを聞いたところであります」


と憤りをあらわにした。


 これに対して舛添厚労相は、直後の来賓あいさつで


  「労働関係法令はきちんと遵守してもらわないといけない。きちんと調査し、指導すべきは指導し、法律にもとるものがあれば厳正に処分する」


と応じた。

この他様様な媒体でも批判を浴びたようで、日本電産は28日に自社サイトにて発言の意図が汲み取られていないと主張

4月23日の決算発表記者会見において、弊社社長永守が「休みたいならやめればいい」と発言したかのような記事が掲載されましたが、そのような事実はなく、誠に遺憾に思っております。


 永守がお伝えしたかった主旨は以下の通りでございます。
 当社は雇用の創出こそが企業の最大の社会貢献であるとの経営理念のもと、安定的な雇用の維持が、社員にとっても最重要であると考えております。
 このような考え方に基づき、これまで経営危機に瀕し、社員の雇用確保の問題に直面していた多くの企業の再建を、一切人員整理することなく成功させて参りました。


 「ワークライフバランス」につきましては、当社では、上記の安定的な雇用の維持を大前提に、「社員満足度」の改善という概念の中の重要テーマとして位置づけております。
 このような考え方に基づき、社員の満足度向上を目的として、2005年度から「社員満足度向上5ヵ年計画」をスタートさせ、2010年には業界トップクラスの社員満足度達成を目指し、推進中であります。


 現に、社員の経済的処遇面に関しては、年々業界水準を上回る率で賃金水準を改善してきており、本年度も、平均賃上げ率は業界水準を大きく上回る6%にて実施することと併せ、年間休日も前年比2日増加させております。尚、休日については、来年度以降も段階的に増加させていく予定であります。
 加えて、男女ともに働きやすい会社を目指し、昨年4月にはポジティブ・アクション活動の一環として、家庭と仕事の両立を支援する目的で新たな制度の導入もし、更なる社員満足度向上に向けて努力を続けております。
     

 以上が、永守が記者会見で申し上げた考え方の要旨でありますので、皆様のご理解を賜りたくお願い申し上げます。


そういう捉え方もできるのか、と思うわけが無い。何故なら同サイト内で公表されている社長のWEBマガジン内で社長の下記のような考えが記されているからだ。気になる部分は太字。

「いったい私と仕事とどちらが大切なの?」女房族が亭主族によくする質問である。
 私は、このたぐいの質問を社員に対してよく試みる。我社のように毎日十時、十一時にしか帰宅できないような会社では、いずれ家庭をもてば、必ずこのての質問を受けるからだ。
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 たとえば、係長で定年を迎えるのと、部長で定年を迎えるのでは、退職金には大きな差がある。また、再就職という問題を考えてみても、どちらが有利であるかは一目瞭然であろう。
 世の女房族も、亭主が出世すれば喜ぶし、給料が上がればうれしいと思っている。しかし「私はどうなの」とくる。ここには、仕事か家庭かの選択よりも、もっと大きな矛盾がある。男は、十分にこれを説得しなければならない。
 私はこの理屈がわからない人間はバカだと思う。だから、こんなバカなお嬢さんと、我社の大切な社員を一緒にさせたくないということにも結びついていく。

http://www.nidec.co.jp/corporate/top/backno/056

 我社の営業方針は、「納期はライバルの半分の時間で、訪問回数はライバルの倍」をモットーにしている。そこで営業マンは、連日十時、十一時まで仕事をすることになるのだが、本社、営業所、工場との連絡はすべて七時以降にするように私は厳命を下している
 これには、七時以降遠距離電話の料金が安くなるということもあるが、七時になれば、各自が自分の席へ戻れるということでもある。
 午後七時になれば自分の席につき、部下からの報告を受ける。翌日のスケジュールをお互い確認しておく。また、七時になれば、東京の営業所であろうが峰山工場であろうが、電話をすれば必ずすぐにつながるようになっている。

http://www.nidec.co.jp/corporate/top/backno/062

 われわれは小学校のときに、「日本は天然資源の乏しい国で、海外と競争をして勝てるのは勤勉で優秀な労働力だけだ」という風に学んだ。事実、わが国がアメリカと肩を並べる経済大国にのし上がることができたのは、かつての日本人がそれこそ寝食を忘れて働いた結果であることは明白であろう。
 ところが、豊かになるにつれて、やれ休みがどうだとか、労働時間が長すぎるといったことばかりが議論され、特にバブル期には一生懸命働くことが罪悪でもあるかのような気風さえ蔓延していた。つまり、苦を放り出して楽だけを求めようとした。しかし、これは原理原則に反する行為だ。その反動でいまの不況を招いたわけだが、企業はやれリストラだ、スリム化だと安易な道ばかりを選択し、社員に「もっと働こう」とハッパをかける経営者はほとんど皆無である。

http://www.nidec.co.jp/corporate/top/backno_old/072

 わが社には、「倍と半分の法則」というのがある。モータメーカーとしては後発組で、実績も信用もない。もちろん人手もないし、設備もなければ資金もない。こんな、ないないずくめの会社が、大手の同業他社と競争して1つでも勝てるものはないかと考えたときに、思い浮かんだのが時間であった。1日24時間というのは、国内のどんな大企業でも、海外の企業であろうと条件は同じだ。この時間を有効に活用することさえできれば、何とか勝負になるのではないか。ここから生まれたのが「倍と半分の法則」であった。
 つまり、他社が8時間働いているのなら、わが社は倍の16時間働く。そうすれば、他社のセールスマンが得意先を1回訪問する間に、われわれは2回訪問できる。また、他社の納期が2ヶ月かかるところなら、われわれは1ヶ月で納めることが可能になる。要するに、求められるものは半分で、与えるものは倍というのがこの法則の精神で、わが社の伝統としていまも受け継がれている。
 この考え方は、ほとんど苦労らしい苦労もしないで育ってきた、いまの若い社員の忍耐力を養うときにも応用できる。忍耐力、辛抱というのは時間との戦いでもある。

http://www.nidec.co.jp/corporate/top/backno_old/064

こう言った発言をしているのだから、日本電産の社長が「ワークライフバランス」を考えているとはいえないのではないか。

部下に対して1日に100回この言葉を投げかけ、またこの精神に則って判断を下し、行動面でも実践していくのが本物のリーダーとしての条件である。

http://www.nidec.co.jp/corporate/top/backno_old/077

だそうだから、ここに書いてある事は社長の信念そのものなのであろうし、記事内容について「誤解だ」と言う方がおかしい。逆に言えば、社長の発言を信じて今まで働いてきた社員に示しが付かない。


私は残業代を支払わない会社に対して残業代を求めたところ、解雇(形式上は自主退社)された事がある。「労働に報いる」と言う言葉を信じて昼夜休日関係なく働いたが、「会社の業績が悪いので」の一言で報いられることは無かった。多くのことを学ばせてもらい、今の自分があるのはその会社のおかげであるということに抵抗は全く無いが、それでももう少し労働に対して報いて欲しかったと思う。
その当時の私の年収は200万以下だった。Javaや.NETが目を出した頃だったので勉強は必須だったのだが、書籍を買うことも自宅で自習するための機材を買うこともできなかった。なので私は残業代を貰えればどうにかこの状況を打破できると思っていたのだが…会社から返ってきた答えは「残業代を欲しがるような社員は要らない」だった。
仕事を続けるにも金が要るし、より良い仕事をしようとするにも金が要る。会社は社員に食えるだけの金しか渡さないのではなく、会社に貢献できるだけの金を出すべきだ。