不況、赤字、リストラ

経済の見通しは暗いようだ。

国際通貨基金IMF)は28日、最新の世界経済見通しを発表した。世界同時不況の影響で、日本の09年国内総生産(GDP)の実質成長率見通しを、昨年11月の前回予測より2.4ポイント低いマイナス2.6%に大幅下方修正した。


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 世界全体の09年見通しは1.7ポイントの下方修正で0.5%と、第二次大戦後で最低の予想となった。米国はマイナス1.6%、ユーロ圏もマイナス2.0%、先進国全体では前回より1.7ポイント低いマイナス2.0%と予想した。


 高成長が期待されていた新興国も、ロシアが4.2ポイントの下方修正でマイナス0.7%予想に落ち込んだほか、中国が6.7%、インドも5.1%とそれぞれ成長率が鈍化する見通しとなった。10年の見通しは、世界全体で3%成長とした。


 IMFはまた、低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題に伴う金融機関の損失が、世界全体で計2.2兆ドル(約200兆円)に拡大するとの予測を発表した。

成長見通し:日本、マイナス2.6%…IMF大幅下方修正 - 毎日新聞 2009/01/29 -

日本政府の見解は甘い、との指摘もある。

 1月20日に公表された政府の月例経済報告は、「景気は急速に悪化している」という異例の厳しい表現で、日本の景気が急激に悪化していることを伝えています。事実、日本の経済活動は、かつて例を見ないほどのスピードで落ち込みつつあります。


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 具体的に言うと、9月の段階では、エコノミストの平均的な成長率予測は2008年度0.7%、2009年度1.3%というものでしたが、最新の2009年1月段階では2008年度マイナス1.3%、2009年度もマイナス1.2%となっています。たった4カ月の間にこれほど大きく変わってしまったわけです。

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 私はこの結果を見て、腰を抜かすほど驚きました。まず驚いたのは、その落ち込みの大きさです。11月の前月比(季節調整済み)はマイナス8.1%というものでした(その後1月19日に確報が発表され、マイナス幅はさらに8.5%に拡大しているのですが、ここでは速報段階の数字を使います)。


 単月での変化率ではイメージがつかみにくいので、これが1年間続くとどうなるかを計算してみますと、何とマイナス63.7%(!)となります(これを「年率」といいます。具体的には0.919を12乗することによって求められます※欄外注参照)。1年間で生産レベルが約3分の1にまで落ち込んでしまうほどのスピードだということです。


 予測指数もまた驚きでした。この調査では、先行き2カ月の見通しも調査しているのですが、それによると12月は再び8.0%のマイナス、2009年1月も2.1%のマイナスとなっているのです。この結果をそのまま当てはめてみますと、2008年9月以降の生産活動は4か月の間に20%も低下することになるのです。


設備投資はお先真っ暗


 次に「機械受注統計調査」を見ましょう。これは、内閣府が、機械製造メーカーが毎月どの程度の注文を受けたのかを調べているものです。企業が設備投資をするには、まず機械の注文を出すはずですから、その注文の動きを見ていれば、設備投資の動きを早めに知ることができるはずです。最新のデータは、これも2008年11月のもので、2009年1月15日に公表されました。この結果もまた驚くべきものでした。


 前月比は何とマイナス16.2%だったのです。年率を計算すると(あまり気が進みませんが)、実にマイナス88%となります。設備投資はお先真っ暗だということです。


 最初に述べたように、以上のことは、10月以降の経済は予想以上に悪化しているという実態が、経済指標によって次第に明らかになってきたということです。おそらく落ち込むスピードという点では、2009年度後半(2008年10月から2009年3月にかけての時期)が最悪期だったということになるのではないかと私は考えています。


 こうして経済活動が落ち込んでいるのは、企業が猛烈な勢いで生産レベルを需要の落ち込みに合わせて調整しているからでしょう。この調整が終われば落ち込みのスピードも緩やかになるはずです。


2年連続のマイナス成長は必至


 さて、経済活動がこれほど落ち込んでいるとなると、成長率もまたかなり低くなっているはずです。そこで、成長率の見通しを四半期別にやや細かく見てみましょう。


 日本の実質GDP国内総生産)は2008年4〜6月期3.7%減(前期比年率)、7〜9月期1.8%減と推移してきました。最新の2009年1月時点でのフォーキャスト調査(1月初めに調査されたものです)によりますと、2008年10〜12月期は、マイナス5.1%と予想されています。ただ、これまで述べてきたように、経済の実態はもっと悪いことが明らかになってきていますから、エコノミストの予想は更に下方修正されつつあり、1月17日の日本経済新聞によりますと、マイナス10%程度になるとの見方が有力になりつつあります。


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 ゴルフで言えば、ティーショットを普通より100ヤード後ろから打つようなものです。どんなに頑張ってもパー(プラス成長)は実現できないのです。簡単に計算してみると、4〜6月期以降、毎期年率3.1%程度の成長を続けないと2009年度の成長率はプラスになりません。これはほぼ不可能ですから、現状において既に2年連続のマイナス成長はほぼ間違いないというわけです。


甘すぎる政府の見通し


 さて以上の議論を目にして、読者の皆さんは「随分細かい技術的な議論だな」と思われるかもしれませんが決してそうではありません。例えば、2008年12月に決まった政府の経済見通しでは、2009年度の実質成長率は0%となっています。これまでの議論からするとこれは実現不可能です。要するに現時点での政府の見通しは、現在急激に進んでいる経済の悪化を織り込んでおらず、今となっては楽観的過ぎる(甘い)ということです。すると次のような問題が出てきます。


 第1に、政府は2009年度の失業率を4.7%と見込んでいますが、経済がもっと悪いとなると、失業率はもっと高くなるでしょう。逆に、政府が失業率を4.7%程度に抑えたいと思っているのであれば、現在考えている程度の景気対策、雇用対策では全く足りないということになります。


 第2に、財政赤字はもっと拡大するでしょう。内閣府は1月16日にいくつかのケースに分けて財政の展望を示しており、最も悲観的なケースでは、消費税を上げていっても基礎的収支の赤字が長期にわたって続くとされています。


 ところが、この「最も悲観的なケース」でも2009年度はゼロ成長となっているのです。つまり、現実の財政の姿は政府が想定する最悪のケースよりもっと悪くなると考えられるのです。


 第3に、2009年度には年金財政の再計算が行われることになっていますが、これについても一定の経済的条件を想定する必要があります。おそらくこの前提も現時点での政府の見通しに沿ったものとなるでしょうから、年金財政の見通しもまた甘くなるということになります。

猛烈に落ち込む日本経済 2年連続マイナス成長は不可避。数字が語る日本の未来は… - 日経ビジネスオンライン 2009/01/22 -

上記の指摘を裏付けるように、大企業の赤字決算と、それに伴う人員整理が発表される。
ソニーは2600億円の赤字。

 ソニーは22日、09年3月期連結決算で、2600億円の営業赤字に転落する見込みだと発表した。純損益も1500億円の赤字になる。同社の営業赤字は95年3月期以来14年ぶりで、赤字幅はこれまでで最大。主力の液晶テレビデジタルカメラなどの販売不振や円高が響いた。昨年10月末に営業利益をそれまでの予想より約6割少ない2千億円に修正したが、年末商戦もふるわず、再び業績見通しの大幅な引き下げを迫られた。

ソニー、過去最大の営業赤字2600億円 3月期見込み - 朝日新聞 2009/01/22 -

それに伴い国内事業で2000人以上の正社員を削減。

 ソニーは不振のエレクトロニクス部門の再建に向け、国内事業のリストラに乗り出す。国内に2カ所あるテレビ工場を1カ所に集約するほか、希望退職募集などで国内の正社員の約3%にあたる2000人以上を削減する見込み。円高や販売不振により2009年3月期は14年ぶりの連結営業赤字に陥る見通しになっており、約3年ぶりの工場再編などでコスト構造を抜本的に見直す。


 ソニーは昨年12月、世界で1万6000人以上(うち正社員8000人)を削減することを軸としたリストラを発表し、中身を詰めていた。具体策として国内エレクトロニクス部門の構造改革策をまとめた。

ソニー、国内TV生産を1工場に集約 正社員2000人超削減 - 日経ネット 2001/01/22 -

日産もV字回復後初の赤字。

 日産自動車が09年3月期連結決算の業績予想を下方修正し、営業赤字に転落する見通しであることが26日、わかった。日産の営業赤字は仏ルノー資本提携し、カルロス・ゴーン氏が経営に参加した99年以来初めて。業績悪化を受け、日産は役員報酬や管理職の賞与カットにも踏み切る構えだ。


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 日産はゴーン社長をはじめとする役員報酬を大幅に削減し、課長級以上の管理職の賞与も減らす方向で調整している。また昨年5月に発表した中期経営計画(08〜12年度)を見直す。5年間で60車種を投入する予定だった新型車種を2割以上減らし、09年度の世界販売目標の420万台も見直す。一方で、新たな収益源として10年度に日米で投入する電気自動車の計画については予定どおり進める。

日産、営業赤字へ 09年3月期、ゴーン氏参加後で初 - 朝日新聞 2009/01/26 -

それに伴って主力車種の工場を海外に移設する事を発表。

 日産自動車は、主力の小型車「マーチ」の生産を10年の全面改良に合わせてタイに全面移管する検討に入った。日産は円高金融危機に伴う販売減で09年3月期は連結営業赤字に転落する見通しで、円高が続いた場合に備え、低価格車の生産を製造コストの安い新興国に移し採算改善につなげる。日本の自動車メーカーが主力車種の生産を海外に全面移管するのは初めて


 現在、追浜工場(神奈川県横須賀市)で行っているマーチの生産をタイの子会社に移管し、アジア各国に販路を広げる。日本での販売分はタイから輸入する方向だ。追浜工場では代わりに、日米で10年に発売する電気自動車などを生産する。ただ、雇用確保のため一部生産は同工場に残す可能性もある。

日産:「マーチ」の生産、タイに全面移管を検討 - 毎日新聞 2009/01/16 -

人件費の安い地域に工場を建てるのは当然と言えば当然だが、日本人労働者の就労先が削られてしまっては、日本は何時まで経っても不況から脱却する事ができなくなる。国債企業の経営者としては正しい判断だろうが、日本企業としては残念な道を選択したと言える。こう言う行為が、将来の購入予定者にどのような心理的影響を及ぼすか…少なくとも私は、今後日産の車を買う気にはならない。
ゴーン社長は日産の役員報酬を返上する見通し。

 日産自動車の提携先ルノーカルロス・ゴーン会長は21日、「ルノーのボーナスはすべて経営実績に左右される」として昨年実績に対する今年のボーナスを返上する方針を示した。


 ゴーン会長は「会社の経営実績が現状のように望ましい状態でなければ、たとえルノー社員の力が及ばぬ理由でも、ボーナスは支払われない」と明言した。ゴーン氏の昨年のボーナスは約140万ユーロ(1億6000万円)だった。社長を務める日産のボーナスも返上するとみられる。

ゴーン氏:ルノー会長のボーナス返上へ 日産社長分も - 毎日新聞 2009/01/23 -

ちなみに日産の役員報酬は平均で3億円(トヨタは約7000万円)


トヨタも大幅な人員削減に踏み切る。

 トヨタ自動車は4月以降、国内工場で働いている期間従業員を追加削減する検討に入った。同社はこれまでも期間従業員の削減を進めており、3月末の雇用人数は約3000人の見込み。その後も国内生産の落ち込みが続けば余剰感がさらに強まる見通しで、契約延長の絞り込みなどで順次減らす。期間従業員がゼロになる可能性もあるという。


 トヨタ期間従業員は最短4カ月契約で、契約を延長すれば最長2年11カ月まで勤務できる。トヨタは国内生産の減少を受け、昨年6月から新規採用を停止。増産期には頻繁だった契約延長も急減している。昨年3月には約8800人を雇用していたが、一部を正社員に登用していることもあり、今年3月末には3分の1に減るとの見通しを示していた


 4月以降も生産水準が上向かなければ、新規採用を引き続き停止し契約延長もさらに減らす。4月以降の計画は今後詰めるが「生産計画次第で(雇用人数が)ゼロになる可能性もある」(トヨタ幹部)という。

トヨタ、期間従業員を追加削減へ 3000人対象、「ゼロの可能性」 - 日経ネット 2009/01/20 -

もちろん国内だけではない。

 トヨタ自動車は北米と英国で正社員を削減する方向で検討に入った。削減数は今後詰めるが、合計で1000人を超す可能性もある。トヨタは世界販売の落ち込みを受けて内外で大幅減産に取り組んでおり、工場を中心に人員の余剰感が強まっている。2009年3月期に戦後初の連結営業赤字に陥る見通しのなか、“聖域”としてきた正社員の雇用に手をつける異例の措置で収益回復を急ぐ。


 トヨタは戦後混乱期の1950年に希望退職を募り、国内で約1600人の正社員を削減したことがある。その後、国内外で需要減を理由に正社員を本格的に削減した例はない。

トヨタ、海外で正社員削減 1000人超す公算 - 日経ネット 2009/01/23 -

正社員を削減すると言う事は、当然生産力が落ちると言う事。先の「生産レベルは1/3にまで落ち込む」と言う指摘も、非常に現実味がある。


この様なトヨタショックによる自治体への影響も少なくない。

 愛知県豊田市の鈴木公平市長は9日の記者会見で、新年度から97億円をかけて進める予定だった新庁舎建設事業について「厳しい財政状況を勘案し、着手を見送ることにした」と表明した。急速な景気の低迷で、来年度の大幅な税収減が確実なため、歳出の抑制を優先させた。


 事業は、同市の三つの本庁舎のうち、老朽化が進む東庁舎を今夏に取り壊して、跡地に地上8階地下2階の新庁舎を建てようという計画で、11年12月の完成を予定していた。


 しかし、トヨタ自動車の業績低迷などで、来年度の法人市民税は今年度当初の9割に当たる400億円減が見込まれる。さらに、この日の会見で鈴木市長は、業績が悪化した企業から取り過ぎた市民税を新年度に返還する還付金の総額が、これまで予想した150億円よりも40億円膨らみ、190億円になるとの見通しを示した。


 5日には、市議会(定数47)で30議席を占める自民党系の最大会派までも、新庁舎建設の見送りなどを求めた提言書を市に提出しており、事業の延期は避けられない状況になっていた。

 ただし、新庁舎建設に先立つ現東庁舎の解体については、まだ結論が出ていない。庁舎を解体した場合の仮庁舎として使うため、市は07年12月に移転した市役所近くの旧民間病院で、約2億9千万円をかけて、建物の改修やプレハブ庁舎の建設を進めており、新年度からは、年に7千万円を超える土地と建物の賃貸料が発生する。

豊田市、新庁舎建設先送り トヨタショックで税収減響く - 朝日新聞 2009/01/09 -

しかしその豊田市を抱える愛知県職員には緊張感が無い。

大幅な財源不足を理由に県から給与カットの提案を受けた県職員組合や県教員組合など5組合が26日、県に抗議する総決起集会を名古屋市中区の名城東小公園で開いた。県内各所から約2000人が参加した。


 集会では、経過説明に続いて5組合の委員長がそれぞれ決意表明。集会後、組合員らは「生活を直撃する賃金削減を見直せ」「県民、職員に財政難を押し付けるな」などと声を上げ、近くの県庁本庁舎までデモ行進した。5組合によるデモ行進は2000年1月以来9年ぶり。


 県は今月16日、給料6%、ボーナス4%の削減を組合に提案。県と組合で交渉を進めており、今月中にも結論が出る見込み。

給与カット提案に県職員ら2000人抗議 - 読売新聞 2009/01/27 -

地方税の歳入減は何も豊田市に限った事ではない。

 政府は27日、地方自治体の歳入、歳出の見通しを示す平成21年度の地方財政計画を決定し、国会に提出した。景気後退で地方税は20年度比で4兆2843億円(10・6%)減と過去最大の減収を見込み、計画の総額は1・0%減の82兆5557億円で2年ぶりの減額となる。地方税は36兆1860億円で、企業の業績悪化による法人事業税の落ち込みに伴い都道府県税は20・1%減の13兆5100億円、市町村税も3・8%減の22兆6760億円と見積もった。

地方税は過去最大の10%減 - MSN産経ニュース 2009/01/27 -

歳入減にあたり、それでも人件費は維持すべきだと言うのであれば、人員削減をすべきである。何故ならば、予算に占める人件費の割合が増え、事業に当てられる予算が減るのだから、必然的に自治体の行える行政サービスは規模が小さくなってしまい、結果必要とする人員が少なくなるからである。
県としては人員を削減することなくこの不況を乗り切ろうと苦心したのであろうが、その対応を仇で返すかのような県職員の方の対応は、私には理解できない。


資金源に不安を抱えているのは自治体だけではない。以前から言われている国民年金の崩壊が現実味を帯びてきた。

「派遣切り」や正社員の早期退職が増え続けるなかで、自営業者や学生などが加入する国民年金制度に「崩壊」の危機が迫っている。国民年金の納付率が2008年10月末時点で59.4%と、60%を割り込む一方で、失業して国民年金に加入するものの、保険料が払えない人が急増しているからだ。社会保険庁は「きちんと払っている人の年金が減ることはない」というが、加入者が増えているのに保険料が入ってこないのだから、このままでは年金原資そのものが枯渇しかねない。


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202万人の保険料全額免除で「制度は破たんしている」


本来、年金は保険料を納めるべき人が納めなければ、年金原資は枯渇してしまい、きちんと納めていた人の年金の受け取りまでも危うくなってしまう。年金原資について、社会保険庁は「50年は積立金の運用でやっていけるよう制度設計している」という。保険料も2015年度には1万6380円に引き上がるので、「枯渇の心配は当面ない」と言い切る。


現在、国民年金の加入者は約2035万人(08年3月末、第1号被保険者)。このうち、失業などの理由によって保険料を全額免除してもらっている人は202万人、一部免除者は54万人に上る。


社会保険庁は、申請による保険料の全額免除者は06年度末に比べて約5万人減ったが、「いまの雇用情勢などを見ると08年度は増えるかもしれない」と話す。


同庁によると、もらえる年金は満額(納付期間40年)だと年間79万2100円だが、減免手続きをした人は減免を受けた期間によって異なり、たとえば1年間の減免期間あった人は、4か月分(未納期間の3分の1)を納めたこととして計算されるので、「満額」に比べて年間約1万3000円減額されるという。


国民年金は原資の3分の1を税金で補っているので、結果的に未納分を税金で負担しているのと同じことになる。


年金問題に詳しい中央大学山田昌弘教授は、「徴収方法に限界がきている」と指摘する。国民年金は、元は自営業者のための年金だったが、そこに学生や非正規雇用者など収入がない人や不安定な人までも対象に加えることで加入者を増やした。それなのに保険料は一律徴収。保険料を納めることができる人が加速度的に減って、それによって原資も減る。「すでに制度が破たんしている」(山田教授)という。

保険料払えぬ失業者の加入が増加 国民年金は崩壊危機 - 2009/01/23 -

消費税を増税しなければならない理由もここら辺にあるのかもしれない。


お金が無い人が増えるのであれば安売り店を目指すしかない、とヨーカ堂も路線変更。

 セブン&アイ・ホールディングスは2010年2月期に、傘下に抱えるイトーヨーカ堂の全店の約2割に当たる30店以上を改装する。主力の総合スーパーをディスカウント店や都市型のホームセンターに転換するほか、ドラッグストアなどを導入する。投資額は100億円以上とみられる。品ぞろえが総花的で価格競争力も劣る総合スーパーは苦戦しているため、好立地の既存店に安売り店や専門店を本格展開してテコ入れする。


 ヨーカ堂の店舗は全国に180店。30店以上の改装は09年2月期の2倍に当たり、ここ数年では最大規模となる。新規出店は数店に抑える一方、品ぞろえの見直しも含めた改装で競争力を高めることに軸を置く。

ヨーカ堂、主力30店以上を改装 安売り店・ホームセンターに - 日経ネット 2009/01/18 -

立地条件としては後発の都市型ホームセンターよりは良い所にありそうだが、思うような集客が望めるのかは疑問。ヨーカ堂のような大型ショッピングセンターは、例えば地方の農家から直接商品を買い付けるような、大規模店舗ならではのネットワークを活用した品揃えを図る事で、他店との差別化をしていけばよいのではないか。
例えばイオンは漁協から直接取引を行い、仕入れ値を安く抑える事に成功した。

 大手スーパーのイオンが島根県の「漁業協同組合JFしまね」から直接仕入れた天然魚が17日、大阪や京都、愛知などのジャスコ計約80店の店頭に初めて並んだ。


 旬の時期にサンマやカツオなど魚を指定して買う産地直送品の販売はこれまでにも例があるが、スーパーが市場を通さず漁協から網ごと直接買い取るのは異例という。


 お盆休み最終日のこの日、各店舗では、前日に松江市の加賀漁港などで水揚げされたアオアジ、ヒラマサなど計約2・7トンを販売。


 店頭に並ぶのが通常より1、2日早いため、より新鮮な魚介類を楽しめる。9月以降は毎月20日に実施する予定。


 ジャスコ野田阪神店(大阪市福島区)に買い物に来た会社員和田光司さん(41)は「まさかイシダイが並んでいるとは思わなかった。見るからに鮮度が良さそうなので、刺し身で食べたい」と笑顔を見せた。

直接取引の天然魚が店頭に イオン、島根の漁協から - 47NEWS 2008/08/17 -

ヨーカ堂も大規模店舗のメリットを活かして漁協・農協等との直接やり取りをするのはどうか。価格競争のみを前面に押し出しては、消費者の心をつなぎとめておく事はできないだろう。それに価格で勝負すると言う事は、消費者でもある従業員の給与を下げる事にもつながり、業界全体の売り上げは右肩下がりになるだけだと思うのだが。


ではどの分野が好景気の起爆剤になるのか。この点については私もさっぱり分からない。
とは言え、各業界とも考え方の転換でまだまだ伸びる余地は残されているのではないかと思う。不況の今こそリストラ以外の構造改革を断行すべき時期だと思うのだが。


例えば音楽業界は10年右肩下がりを続けていると言う。

 日本レコード協会(東京・港)は19日、2008年の音楽ソフト生産実績を発表した。CD・DVDなどを合わせた総生産額は前年比8%減の3617億円となり、10年連続で前年実績を下回った。洋楽不振が続いているのに加えてネット配信へのシフトが進み、主力の音楽CDの生産額が落ち込んだ。ピーク時の1998年に比べると金額、枚数とも半減したことになる。


 音楽CDは前年比11%減の2912億円だった。主力の邦楽は10%減。EXILE、安室奈美恵など前年実績の3枚を上回る計七枚のミリオンセラーが出たが、中堅クラスのヒットが乏しかった。洋楽は世界的なヒット不足が響き15%減だった。シングルは携帯電話向けなど音楽配信への置き換わりが進み、15%減となった。

08年の音楽ソフト生産額、10年前の半分に - 日経ネット 2009/01/19 -

確かに10年前に比べて耳に残る音楽と言うのが最近思い当たらない。著作権管理が厳しくなったのか、歌が流れているショッピングセンターはなかなか無い。インディーズレーベルを扱っている店舗であれば、JASRAC管理楽曲以外のものが流れているのは時時耳にする。
結局、ソフトは使われない限り普及しないのだ。耳に入ってこない曲を積極的に購入する意欲等起きるはずも無いのだから、既存の著作権ビジネスに固執して音楽業界を先細りさせていくよりは、普及の為には先ず聞いてもらう事を前提としたビジネスモデルを考えていくべきだ。


新聞も厳しいと言う。

「部数がすべてを解決する」は一面真実だった


河内さんは「印刷・販売工程を各社で共通化すべき」と話す――ここ数年でこそ、新聞は「衰退している」という言われ方をしますが、かつては「儲かる商売」だと言われてきました。何故儲かったのでしょうか。


河内 まず、国際的に見て、日本の新聞業界の特徴は、人口に比べて発行総部数が非常に多いことです。およそ5000万部と言われていますが、他の先進国に比べると大変な新聞大国です。英国も新聞大国と言われましたが、部数は1700万部しかありません。人口が倍近いアメリカとほぼ同じですからね。


一方、新聞社の数は日本では100前後なのに対して、米国は1400。国際的に見ると、日本の新聞社は、1社あたりの発行部数が非常に多い。これは、経営としてはすばらしいことで米国の大学教授の中には、「米国の新聞業界も、日本のように寡占化しないと生き残れない」と言う人もいます。ただ、この寡占化構造は、自発的に作り上げられたものではありません。日本でも、1930年代までは、1500〜1600ぐらいの新聞社があったんです。それが、戦争遂行のための総動員体制になって「1県1紙政策」が強制され、様々な新聞が合併させられた結果、昭和18(1943)年には56まで減らされてしまった。これは国家統制という面では困りますが、経営の合理化という点で、良いこともあったんです。過当競争がなくなり、ある意味で、安定した。


戦争が終わっても、寡占化された経営構造は残った。その後の高度経済成長もあって、寡占化しながらマーケットが広がっていった。ある意味、理想的な経営環境だったんですね。そういう意味で、新聞は「儲かる商売」だったんです。


――具体的には、どのような「もうかる仕組み」があったのでしょうか。


河内 新聞社には「部数がすべてを解決する」という言葉もありましたが、これは一面の真実を表しています。高度成長期は、販売店が仮に実際の部数が1000部であったとして、発行本社の方で1200部(200部余計に)送っても、拡張努力でお客さんを増やせた。だから、「押し紙」ではなかった。部数が増えれば、広告単価も上がって、どんどん儲かるような仕組みが出来ていった。


全国販売店2万1000店で、1兆8000億円の売り上げ、そのうち半分近くを販売管理費に使っている。普通の商売だったら成立しませんよ。それでも何とかなっていたのは、広告売り上げが右肩上がりだったからです。広告代理店からの要請を断るのが大変、そういう夢のような時代があったんです。


――では、その「夢のような時代」は、いつ頃曲がり角を迎えたのでしょうか。


河内 転機は、バブル崩壊の頃ですね。現実には、高度成長が終わった80年代に兆候が見えてきたように思います。広告が、90年代から急落したんです。バブルのピーク時に比べると、半分ぐらいにまで落ち込んでいる。不景気が原因であれば、景気が回復すれば広告も戻るはずなのですが、現実にはそうではない。


地域でシェアが高い新聞の多くが、広告収入で前年割れの状態が続いています。これは、広告主が「新聞から他媒体に引っ越しちゃった」という現象です。「広告を出したいが、出せない」という訳ではない。


さらに言うと、2年ほど前に、日経の広告収入が読売に迫るぐらいの勢いで伸びてきたんです。そうなると広告営業上、「300万部と1000万部の違いは何なのか」という話になってきます。つまり、「部数、シェアー=広告単価」という黄金律が消滅してしまったんです。


――それでは、販売収入が落ち込んでいる理由は何でしょうか。


河内 やはり、「新聞離れ」でしょうね。若い人は新聞を読まないし、お年寄りは読んでも購読していない。図書館や公民館なんかで読んでいるんですね。


この原因は、携帯電話の普及にあるのではないかと思います。今、何だかんだ言って、携帯代金は、1世帯あたり2万円はかかるでしょう。その反面、「家庭で情報収集のためにいくら使いますか」という問いには、「2万円以下」という答えが圧倒的に多い。そうなると、減らされる対象は、月4000円の新聞とNHKにならざるを得ない。世帯別の購読率が下がって、販売収入に響いています。一般家庭だけでみると、購読率は50%を切っている、というデータもあります。


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――ネットとの関わりについてはいかがでしょうか。各社とも苦戦しているようですが、収益源にする方法はありますか。


河内 新聞社が大挙してネットに押しかけても、ポータルサイト、ヤフー、グーグルといったプラットフォームに儲けられるだけですよ。ストレートニュースのように、いったん消費者に無料にしたものは、後から「お金くれ」と言っても無理です。そこで、新聞社にしかない情報を発信する有料の専門サイトを作れば良いのではないでしょうか。ロング・テールの考え方です。


例えば、農水省のクラブには大量の資料が配布されて、10以上の業界紙でも、その内容を全部は紹介し切れていない。ネットならば、業界紙よりも詳しい情報を発信できるはずです。「じゃがいも新聞」「まぐろ新聞」とか。細かい、ニッチな情報を掲載するサイトをつくって有料で読んでもらえるようにすれば、可能性はあるのではないでしょうか。「お金を払ってもらえるコンテンツ」は、存在するはずです。


新聞社は、凋落しているデパートのビジネスモデル。「すべてがそこにある」ということは「読みたいものが何もない」になりかねない。オール・イン・ワンの新聞の使命は終わったことを認識して、金になるニッチな細かい情報を配信するような形で出直すべきです。

ビジネスモデルが崩壊 身を削ぐような合理化が始まる (連載「新聞崩壊」第10回/ジャーナリスト・河内孝さんに聞く)- J-CASTニュース 2009/01/08 -

新聞の発行部数がアメリカの3倍近くあるのには驚いた。それだけ販売して赤字とは、よほど経営に問題があるのだろう。
情報は活用できる状態になってないと情報とは言わない。煩雑に並んだ数値に価値は無く、それらを整然と並べて意味のあるものにして始めて価値が出てくる。情報に価値を付けて販売するのが報道機関のビジネスモデルであるならば、高度に情報化している現在、上記のようなニッチ新聞を作ると言うのは極めて重要な生き残り策であると思われる。
とは言え、新聞記者の方方の専門知識の無さ、そして情報に対して疑いを持たない体質は以前から指摘されてはいるので、実現可能かどうかは非常に怪しい。

 確かに、公共圏の存在と維持は、重要なことだ。そして、プロのジャーナリストの大きな役割が「公衆の番犬」であることも間違いない。


 しかし、そのことと、いまの日本の報道機関が現実にその役割を果たしているかどうかは、別問題である。


 とくに経済政策について、日本の巨大メディアが番犬機能を果たしているとは、到底思えない。むしろ、政府のプロパガンダの伝達役でしかないことが多い。政府の宣伝文句に何の疑いも持たず、受け売りで報道している。これでは、番犬とはいえない。このことこそが問題だと、私は思う。

「食料自給率40%」の虚構さえ見抜けぬマスメディアの不勉強 日本のマスメディアは「公衆の番犬」ならぬ「既得権益の番犬」か? - DIAMOND ONLINE 2008/09/29 -

情報を売るには高度な知識と知恵が必要だ。情報を集める作業も大切だが、新聞社の方には情報を整理する作業にもっと注力して欲しい。そうやって初めて他紙との差別化が図れるのではないだろうか。
情報だけなら個人のブログでも十分だ。しかし多岐にわたる高度な分析は、組織力をもった専門集団にしかできない。新聞社の価値はそこにあると私は信じている。


民放も赤字。

 日本民間放送連盟は15日、全国のテレビ局127社のうち43%にあたる55社が2008年9月中間期に経常赤字になったことを明らかにした。広告収入不振に加え、2011年7月に予定する地上デジタル放送への完全移行に向けた設備投資が収益を圧迫した。広瀬道貞会長は同日の記者会見で民放の経営状況について「民放連の58年の歴史で最悪」と語った。


 民放連に加盟する194社の地上波テレビ局とラジオ局のうち約47%にあたる92社が中間期に経常赤字を計上。テレビ局に限れば127社のうち55社が赤字だった。09年3月通期の見通しについて広瀬会長は「さらに悪化していく恐れがある」と厳しい認識を示した。


 地デジへの移行完了に向けた放送業界の設備投資額は民放だけで1兆円超にのぼる。同会長は「ローカル局の投資額は各30億―50億円で、各局の利益の約10年分」と説明。一方で「(減価償却負担が増す)当面の局面を乗り切れば、またテレビの時代になる」と力説した。

民放、55社が経常赤字 08年9月中間、地デジ移行への投資響く - 日経ネット 2009/01/15 -

そもそも視聴率が落ち込んでいる今、今のままでまたテレビの時代になるかは疑問だ。
新聞社と同じように、今のような何処のチャンネルを合わせても同じような番組を流すのではなく、局毎の個性を感じるような編成にしてはどうだろうか。専門チャンネルが生き残っているのは、チャンネルの色がはっきりし、目的を持ってテレビを見れるからではないだろうか。
単に情報を垂れ流すだけの今のスタンスでは魅力が薄く、いずれ消え行くだろう。


雑誌も落ち込み。

 出版科学研究所は26日、2008年の出版物の推定販売金額を発表した。


 雑誌は前年比4・5%減の1兆1299億円と11年連続の減少となり、落ち込み幅も過去最大となった。7点のミリオンセラーがあった書籍は、販売部数こそ前年比0・6%減にとどまったが、販売額は、1・6%減の8878億円と2年連続で減少した。この結果、雑誌、書籍を合わせた総販売額は対前年比3・2%減の2兆177億円と、4年連続の減少となった。


 同研究所では「分冊百科などの目的が明確な雑誌は好調だが、定期雑誌の目減りが大きい。若い読者が増えておらず、厳しい状況が続く」と分析している。

昨年の雑誌販売、11年連続の減少…落ち込み幅は過去最大 - 読売新聞 2009/01/26 -

民放機関と同じよう、やはり情報を垂れ流すだけの出版物には魅力が無いのだろう。専門誌が好調なのは、雑誌と言うメディア自体の魅力は未だ高い事を如実に物語っている。


最後に専門医療機関の赤字。こちらは不況の所為ではないが、かなり深刻な問題である。

 10年度に独立行政法人に移行する国立がんセンターなど厚生労働省所管の国立高度専門医療センター6機関(8病院)の借入金残高が計1700億円を超えることが22日、厚労省の試算で分かった。大半の病院で経常支出が経常収入を上回り、国の十分な支援がなければ経営そのものや、医療の質の低下などが懸念される。


 国立高度専門医療センターは、がんや循環器、子どもの疾患などの先進医療を担う。独法化は、研究成果の実用化推進や優秀な人材確保などのため、昨年12月に成立した法律で決まった。この過程で厚労省が初めてセンターごとに借入金を試算した。


 資料によると、借入金残高は、国立がんセンターが583億円と最多。国立国際医療センターの357億円、国立成育医療センターの343億円−−と続き、計1732億円に達した。経常支出に対する経常収入の割合(収支率)は07年度現在、国立がんセンターの中央病院と東病院が100%をやや超えたが、他はそれ以下で、自由に使える財源は乏しい。


 中央病院など比較的最近できた病院は、民間に比べ、1床当たりの建設費が約1億円と約3倍高い。厚労省は「借入金は建物や医療機器の整備に充てた。高機能病院のため建設費が高くなり、借入金が膨らんだ。独法化後も運営に支障がないよう財政当局と調整し対処する」としている。【河内敏康】


 ◇上昌広東京大医科学研究所特任准教授(医療ガバナンス論)の話
 独法化すれば、各センターは独立採算を取らなければならず、これだけ大きな借入金の返済はまず不可能。一般病院にはない、がんなど特定疾患の高度な専門治療を行う目的があり、経営困難から不採算部門を切り捨てるようなことがあってはならない。ここまで放置した国の運営責任も重い。対応策を講じるべきだ。

国立高度専門医療6機関:借入金1700億円超す - 毎日新聞 2009/01/23 -

高度な目的を持った医療機関には相応の対価を国が支払うのは必要な事だと思う。人件費が高い日本において、技術力を高める事は国の存亡にかかわる問題である。不況だから、歳入減だからと言って削って良い部分ではないだろう。