消費行動は投資であると言う考え

【5】本当に大事だと思うものに、お金を出そう」について。

 「不景気なので節約している」と言う人は多いでしょう。お金は大事に使うべきですし、無駄なお金は使わない方がいいのも当たり前です。


 しかしむやみに節約するのではなく、「大事なものにはお金を使う」ことも、重要なことです。「お金を使わないと経済が回らない」というだけではなく、お金を使わないと自分の大事なものを守ることができないからです。


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大事なもの、好きなものを残すために


 「単行本にも広告を入れて価格を下げるべきだ」という意見もあります。テレビCM、雑誌のタイアップ広告、キャンペーンなど、今や商品やサービスには広告がつきものですが、「広告を導入するビジネスモデル」だけが、よいわけではありません。


 単行本は広告がない分、読者のことだけを考えて作ることができますから、挑戦的なテーマやマイナーなテーマにも取り組めるのです。


 一方で消費者は、自分にとって必要なものには意識的にお金を払っていくことも大事です。広告に依存しているだけでは、広告が少なくなるとその商品やサービス自体がなくなってしまうこともあります。


 「タダだった」「節約できた」「もうけた」という目先のことばかり見ていると、その時は得したように見えても、結局は自分の損になってしまうこともあります。


 もちろん「本なんて時間つぶしだからお金はかけたくない」と思う人や、「この厳しい家計では本にはお金をかけられない」と思う人は、本にお金をかけなくてもいいと思います。


 しかし、自分の好きな作家や、「あんまり知られてないけど応援したい」という作家の本だったら、お金を使った方がいいのです。自分の好きなものや残したいものにお金を使っていかないと、それがなくなってしまってから残念がっても遅いのです。


 また私と同業の編集者でも本を買わなかったり、しかもなぜかそれを自慢げに語ったりする人もいるのですが、自分の所属している世界にはお金を使うべきだと思うのです。「身銭を切らないと身につかない」と昔から言いますが、これはやはり大事な考え方だと思います。


 もちろん本だけではありません。映画や音楽でも、いつもレンタルだけではなく(レンタルでも著作権料は入りますが)、好きな監督やアーティストの作品なら、映画館に行ったり、ライブに行ったり、DVDやCDを購入したりしてはどうでしょう。


 好きな飲食店だったら、しばしば通うようにする。また好きな店があれば、ちょくちょく買い物をする、ということが大事なのです。その作品や店を応援するためには、きちんとお金を使うことが一番であり、支持の表明であり、守ることになるのです。


消費や声が「投資」になる


 経済活動は「投資」です。自分にとって大事な世界や守りたい世界を、「自分の投資で守ること」は大事なことです。


 好きなものにお金を使って応援をすることは投票活動と同じで、作り手に対する「あなたを支持している」という意思表明でもあります。


 支持することを「お金」で表すのが難しければ、「声」を使ってもいいのです。本を読んだら読者カードなどで出版社に感想を伝える、好きなテレビ番組なら番組のホームページに感想を書き込むなどでもいいでしょう。


 ブログやSNSソーシャル・ネットワーキング・サービス)の日記を持っているのであれば、そこに自分の好きなことやものについての評価を書けばいいのです。


 作り手はブログなどを検索して、自分の作ったものへの反響を見ているものです。私も時々、自分の記事の反響をインターネットで検索しています(もちろん、ここで頂くコメントも参考にさせていただいています)。


 少し前までは、普通の人が声を上げられる場は新聞や雑誌の投書欄くらいに限られていました。しかも投書欄は、編集の手が入ることもあります。自分の書いたものがそのまま発信されるブログは、自分の好きなものを残すために利用できるメディアでもあるのです。


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 私たちも、100円でも1000円でも誰かに対する支持を表明する力になり、大事なものを守ることにつながるのだということを、自覚することが大事だと思うのです

【5】本当に大事だと思うものに、お金を出そう お金を使うことで、好きなものを守り、支持の表明にもなる - 日経ビジネスオンライン 深澤真紀 -

知人に「量販店で実物を調べ、それが気に入ったら、ネットで最安値を探してそこで購入する」と言う行動をとる人が居た。
その人に言わせると、「量販店で購入する人は、最安値を知らない情報弱者」だそうだ。「その様な消費行動を皆がしていたら量販店が成り立たなくなり、結果実物を調べると言う事ができなくなる」と指摘すると、「馬鹿は必ず居るから潰れない。万が一潰れたら別の店に行く」と一蹴された。
本人には、社会インフラを食いつぶしていると言う自覚は無いらしい。


売店の店員が懇切丁寧に説明してくれるのは仕事だからである。
そして当然の如く、仕事をすれば賃金が発生する。その賃金の発生源は、商品の売上代金である。店員に説明を聞いた上で商品が気に食わないと言うならまだしも、気に入った商品まで他店で買われては、その店員はただ働きをしただけに終わってしまう。


無駄遣いしない事を「賢い」と評す事がある。この「無駄遣いしない」と言う部分を「最安値で買う」と言うように変換し、「最安値で買うことは正しい事」と言う人が居る。
しかしそれは大きな間違いだ。最安値で買うことは賢い買い物ではなく、同じく無駄遣いしないということは、最安値で買うということではないのだ。


私の経験による話。
私は趣味で車をよく弄るが、弄ってもらう店は1店に絞っている。最近は工賃をネットで公開している店があり、そういう店と比べると場合によっては多少高い事もあるが、それでも一貫してそこを使い続けている。
結果、思わぬ作業工賃が安くなる事がある。
自分が保守作業をやった人であれば分かるだろうが、他人・他社の製品を保守するのは、自分・自社の製品を保守するよりも難しい。特に他社で保守を経験した後に回ってきたものは、前回の保守作業でどのように直されているのか分からないのがネックになり、保守作業が一層難しくなってしまう。
その為、初めてのお客様の保守費用は多少多めに掛かってしまう。逆に以前受けたお客様であれば、そう言ったことが無い分保守費用は安くなるし、付き合いが長くなれば「前回多めにもらってしまったから今回はその分安くしよう」と言う事にもなる。一つのお店と長く付き合うと、店側としては長期的な収入源としてお客を見てくれるので、価格も良心的なところに落ち着く。
逆に「この客は長く続かない」と判断されると、その時時で確りと利益を確保されるので、料金は高くなる。
車の趣味を10年続けようと思った場合、この金額の差は大きい。
また金額以外の部分でも利益を得られる事もある。私の場合、長くお付き合いした事もあって、お店の設備や工具を無料で貸してもらえる。こういった設備を時間貸ししてもらう場合、1時間2000円程度必要だが、朝8時から夜20時まで使わせてもらっても無料であるし、壊れた車をリフトで持ち上げ、部品を取り外して自走できない状態にしておいても、そのまま廃車手続きをしてくれる。


もちろん無料で貸してくれるといっても借りた後には手土産を持っていくし、借りた分だけ業務のお手伝いを(できる範囲で)させて頂いたりする。こう言った紙幣を介さないサービスのやり取りの部分がソーシャルキャピタル(=社会関係資本)と言う部分であり、この部分が増えてくるのが今後の日本にとって望ましいことだと思っている。
「賢い金の使い方ができる人」というのは、万事この様な消費活動が取れる人のことなのではないか、と私は思っている。とは言えそれも相手次第。
もちろん、この様な消費行動が取れるのは相手にもかかっている。だからこそ人を見る目を養うのが重要なのであり、見た目等の表層でしか人を捕らえない方は、経済的な部分でも損をするのである。


なので私は、筆者の言うような「消費活動を投資と捕らえ、長期的なリターンを考えて消費活動をしていく」と言う事は、きわめて重要だと思っている。
ちなみに「車の趣味」と言う金のかかる趣味も、長期的な視野で言えば私に経済的な恩恵をもたらしてくれた。様様な方方と知り合う事ができ、職を失った際にはそうやってであった方に職を紹介していただけた。
自らの消費活動で多くの人とかかわりあう事ができると言う、ただその事が重要なのだと言う事をもう一度考えてみてはいかがか。