「日本は何故大統領制ではないのか?」と言う質問

先日、弟に「何故日本は内閣制なのか。国民の意見を反映させやすいのは大統領制なのだから、日本は大統領制になるべきではないか」と言われた。
私は「日本はイギリスを参考にして憲法を作ったから内閣制なのだ」と答えた。加えて「日本は大統領制に向かない」とも答えた。


1.
明治維新の際に幕府側が勝利していたとしたら、フランスを手本にした大統領制になっていたかもしれない。何故なら幕府側の後ろ盾がフランスであった事、政治の実験は幕府から離れなかったであろう事が理由である。その際は国会は二院制で上院に諸大名、下院に有力商人や地主と言った資産階級が選出され、大統領は二院により選出されるような感じか。
その際に天皇の存在がどうなるか。この場合天皇は日本の国家元首として存在するのではなく、もしかしたら京都府御所周辺がヴァチカン市国のような存在として位置付けら、日本国内にある日本ではない国として扱われるようになったかもしれない。そうすることで天皇は日本の政治に関する一切の責任を追うことも無くなるのだから、国家元首として敗戦責任を問われる事も無かったろうし、それはそれで良い政治形態ではないかと思う。
まあそのような事になっていたら日清戦争〜太平洋戦争までの一連の戦争は行われなかったろうから、世界情勢もガラリと変わっていただろう。結果、私たちの今の生活よりも良くなっていたかどうかは分からない。良くも悪くも今とは過去の積み重ねでしかないのだし。


2.
弟の意図した大統領制、つまりアメリカの大統領制が日本に向かないのは何故か。簡単だ。単一民族で和を貴重としているため、発言力のある一つの意見に流されやすいからだ。
日本人の気質が「ムラ社会」と言う言葉で表されるように、あまり周囲と異なった事は好まない性質のものであり、昨今の世論のようにテレビで大大的に報道されている内容を妄信して「小泉チルドレン」なる政治化を生み出したり、民主党の圧勝に終わったりと、確固たる意思を持って政治に参加する事がとても不慣れな国民である。一時の感情に流されて国家元首を決めてしまうのは大きなリスクであり、故に日本ではアメリカ式の大統領制は合わないと思うのだ。
アメリカは多くの民族を抱える移民国家であるから様様な意見が対立しあう国である。自らの意見が他人と違うのは同然であり、意思を持たない事には生き延びられないからこそ、確りとした意見を持とうとする。その意見のバックボーンとして民族的・宗教的なものが存在する。
可能性としては、江戸時代の日本のように各藩や村村の集団意識が強い時代であったなら、もしかしたらアメリカ式の大統領制が成立しえたかもしれない。まあその場合はあっけなく他国に侵略されて終わっていただろう「○○藩の者」とか「○○村の者」と言う枠を取っ払い、日本を単一民族として纏め上げたからこそ、近代日本が成長したのだと思う。その結果、アメリカ式の大統領制、つまり直接的な民意によって国家元首を決めると言う風土でなくなってしまったのではないか。


と、得に論拠も無いのだが、自分の考えを纏めて弟に話してみたところ、それなりに納得していたようだったが「やっぱり大統領制がいいよなー」とぼやいていた。