時は金なり

道路問題の先送りはできない 不良債権問題の失敗を繰り返すな」について。
相変わらず「高速道路が無料化すれば経済が復興する」と述べているが、その根拠を今回は「金融マンとしての勘」に持ってきていたので失望。氏によれば現在まで続く株価の低迷は高速道路の無料化が実現しなかったことに起因するらしい。

 なんということを決めたのだろう。日本経済復活の最後の決め手である高速道路無料化でなく、高い料金を半永久的に取り続ける民営化を決めるとは。その時の言いようのない失望を今でもはっきり覚えています。これでは株は上がらない、金融マンとしての直感でした。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080317/150225/?P=2

稀有な例を除けば、高速道路が無料化したところで経済復興には至らない。。稀有な例の一つとしてアクアラインの料金削減による利用率の向上と言うものが挙げられるが、それは潜在的な利用者数が多いからであり、利用することによるメリットが計り知れないからでしかない。
例えば新宿から木更津まで行こうとした場合、アクアラインを通る方が圧倒的に早いし、羽田空港から木更津まで行く場合はより近いし、東京港から輸送するにも便利である。こういった場所からアクアラインを使うことで、木更津までの輸送時間を軽く1時間程度は低減できるのではないか。
何故私が木更津に拘るかと言えば、今、木更津の港湾周辺に何も無いからである。この場所の復興を考えた場合、物流を促進させる手段としてアクアラインの料金削減(無料でも可)は最も手っ取り早い方法である。若しくはアクアラインを鉄道用に改修し、安全に大量輸送ができる環境を整えるべきである。鉄道輸送が活躍している昨今、川崎-袖ヶ浦間の鉄道路線は魅力的な路線だと思うのだが…引き方によっては羽田まで直通にできるだろうし、そうすると一挙に栄える可能性があると思うが…


しかし反対に、多くの地方にとって高速道路の無料化に伴うメリットは無い。
散散述べてはいるが、例えば国道20号と併走する中央道、国道4号と併走する東北道が無料化したからといって、どれだけの経済効果があると言うのだろうか。利用料を取っている今でさえ渋滞が起きるほどに利用台数が多いというのに、無料化して高速道路を開放したところで、より一層の渋滞を促すだけではないか。

 渋滞は道路を走る車の数が一定密度を超えると起きることが、自動車を走らせる実験からわかった。トンネルや坂といったボトルネックなどの特別な外因がなくても自然発生するという。英国のオンライン物理学誌ニュー・ジャーナル・オブ・フィジックスに4日発表した。


 名古屋大学情報科学研究科の杉山雄規教授や大阪大学サイバーメディアセンターの菊池誠教授らの研究チームが実施した。大学の敷地内に1周約230メートルの円を描き、これを車線にして乗用車を時速30キロで走らせた。慣れたドライバーが円の上を走るだけなので、渋滞を起こす外因はない。


 車間距離によって車の加速度が決まる数理モデルをたてたところ、車が約20台を超えると渋滞が発生すると予測された。


 実験では、22台が連なって走った。最初は約10メートルの車間距離を保って走行したが、数分たつと流れの悪くなる部分が現れ、やがて4、5台は一瞬、完全に止まるようになった。前の車両が動けば再び走り出すが、渋滞部分は車の流れと逆方向に順々に後送りされ、時速20キロほどで後方に向けて移動した。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200803040038.html

ちなみに欧米基準で高速道路を語っておられる氏。しかし、確かに高速道路は無料かもしれないが、イギリスでは渋滞税が課せられ、逆に自動車物流の制限を行っている。物流の主体が自動車でなくても機能すると言う一例であり、「道路が無料で無いと経済が復興しない」訳ではない。


確かに経済活動に道路は必要だが、道路料金が問題なのではなく、移動時間の問題である。東京から青森まで高速道路が無料化されたところで、青森の経済が発展するわけではない。「都市鉱山を活用するために十和田湖付近の企業を活用すべきで、その為に高速道路は無料化すべきだ」と言ったところで、誰がそこまで運ぶのか。片道700km超の道を運転することがどれだけ難しいことか分かっているのだろうか?ノンストップでも7時間超、途中休憩を入れれば10時間コースだ。もちろん専業ドライバーであればより休憩を少なく運べるかもしれないが、それでも9時間を下回るとは思えない。道路状況によって順調に行かないこともあるだろう。
つまり、輸送に重要なものは料金ではなく時間であると言うことだ。「時は金なり」の言葉も示すように、料金と言う目に見える費用よりも、時間と言う費用を節約することが重要なのであり、これは輸送にとっても同じ事。そして「時間」と言う言葉は「距離」と言う言葉に置き換えることもできるので、無料だからと言ってより膨大な輸送時間を要する場所よりは、有料でも輸送時間の短い場所の方が発展する要素が強いのである。


私は車で遠出をする。その際、夜中に下道で新宿から2時間かかる場所から、途端に田舎の印象を受けるようになる。新宿から1時間圏内はかなり都会のイメージがあり、1.5時間で地方都市、2時間で田舎と言う印象だ。例えば青梅街道を使えば新宿駅から2時間で青梅駅甲州街道を使えば高尾駅、湾岸を千葉方面に抜ければ袖ヶ浦と、そこから先は田舎だと感じてしまうような場所になってしまう。
そういう経験から、移動時間と言うものが経済に与える影響はあるのではないかと実感しているので、地方の活性化の為に高速道路の無化を行ったところで意味は無いと思うのである。


しかしまあ

 道路と国土の問題は今も残っています。もちろん高速道路の借金もそのままです。それどころか、今の40兆円の借金の上に、建設計画が決まっているだけでも、2020年までで20兆円、そして政府の「道路の中期計画」に沿って計画を実行すると、さらに20兆円、つまり新たに合計40兆円の借金をして過疎地にまで、採算など関係なく高速道路を作る予定です。そんな路線の通行料金は高過ぎて、地元ではほとんど利用できないのは明らかです。

と、利用者が少ないと予想される新規道路を批判しておきながら、現状利用者数の少ない道路を活用する為に利用料金を無料化しろと言う主張は、ダブルスタンダードな気がするのは気のせいだろうか。利用料金が無料であれば「過疎地の活性化に繋がる」と諸手を上げて賛成するのか…?