毒餃子報道について

まず事件概要を。

 千葉県市川市で22日夜、中国産の冷凍ギョーザを食べた一家5人が、下痢や嘔吐(おうと)の食中毒症状を訴えて入院していたことが30日、分かった。5人とも現在、入院中で、うち5歳の女児が一時重体となったという。千葉県警はギョーザの具などから、有機リン酸系の農薬成分「メタミドホス」を検出。製造過程で薬物が混入したとみて業務上過失傷害などの疑いで捜査を開始、流通・販売ルートなどを調べている。


 同県警捜査一課は30日の記者会見で、殺人未遂事件として捜査するとも述べた。ほかにも千葉県内と兵庫県内で、同じ冷凍餃子を購入し、食中毒症状をで病院で手当てを受けたケースが2件あり、各警察当局で捜査している。


 調べでは、市川市の一家5人は今月22日午後8時ごろ、自宅で夕食として中国産の冷凍ギョーザ餃子を食べたところ、下痢や吐き気などをもよおし、病院に収容された。その後、県警で一家が食べた餃子を鑑定したところ、有機リン系薬物「メタミドホス」が検出された。


 農水省によると、メタミドホスは海外では農薬として使われているが、日本国内では農薬として登録されていない。


 千葉県警によると、餃子はCO・OP冷凍食品「手作り餃子40個入り(560グラム)」(399円)で、原産国は中国。輸入業者は「ジェイティフーズ」(東京都品川区)。昨年10月20日に製造され、賞味期限は今年10月20日までだった。


 一方、厚生労働省は30日、中国産ギョーザを輸入販売していたジェイティフーズに対し、同一製品の販売中止と輸入自粛を要請することを決めた。

家庭用のみか業務用まで含むのかは疑問だが、この記事を読んで餃子の外食は控えようと思ってしまう心理的な作用が私に大きく働いたのは事実だ。ファーストフード店で働いていた身としては、衛生面についての問題はそれほど外食を控える要因にはなりにくい。もっとも、最近は目に見える場所で料理をしてくれるようなラーメン屋や回転寿司というような場所でしか飲食しないが。
しかし薬品となると話は別で、こう言ったものは火を通したところで無害になるというような性質ではないし、作り手が幾ら注意を払っても避けることができない。料理に使う野菜の原産地を明示してくれる店は殆ど見かけない為、この問題は全ての外食を控えると言うことでしか回避することができない。
なので、これはかなり気になるニュースだった。


時系列に並べると下記の通り。
2007/12/28 手作り餃子で親子2人が救急車で病院に搬送。
2008/01/05 ひとくち餃子で親子3人が救急車で病院に搬送。父親が入院中。
2008/01/07 品川保健センターから連絡があり、2008/01/05の事件を知る。
2008/01/22 手作り餃子で5人が救急車で病院に搬送。5人とも入院中。
2008/01/22 警察からサンプル提出要請
2008/01/29 警察から分析結果発表
日付不明 2007/12/28の件について異常なしの分析結果


中国産ということであまり報道されないなんて落ちになるかと思ったが、テレビでも結構取り上げられていたようだ。まあ「注射針の跡が無いとは言うが、被害者が開封してしまっているためにそれが本当かどうか分からず、日本で混入された可能性もある」と中国を擁護しているコメンテーターも居たが、かなり苦しい。
ネットでも大きな話題になっていた。その中で産経onlineで掲載されていた「毒ギョーザ会見」について。11分割されていて、それぞれ(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(11)を参照していただきたい。

 報道陣「生協が把握したのはいつか。短期入院と言っていたが、兵庫のケースも含めて、もう少し具体的に症状をきちんと教えてほしい」


 生協側「生協には(昨年)12月末に申告があった。においがおかしいということで申告された。食べて吐き出し、家族2人が1日入院した。原因を調査するためににおいの検査に出し、原因は特定できていないが、においは確かにあった。昨日の段階で千葉県警のほうで解析を始めているが、まだ特定できていない。ただ、相当なにおいがあった」


 報道陣「においとは?」


 生協側「薬くさいにおいがして、吐き出した」


 報道陣「においの検査とは?」


 JT側「JTの外注先の東京顕微鏡院で検査をした」


 報道陣「千葉県警に検査を依頼したのか」


 JT側「入院した方がいるということで、警察で独自に検査をしていると聞いている。会社も(被害者が食べた商品の)同じ日付で残っている物のサンプルについて、化学物質の検査を始めている」

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080130/crm0801301827029-n1.htm

においは有ったらしいが

 報道陣「天洋食品からの商品でクレームは初めてか?」


 JT側「そうだ」


 報道陣「生協の話では12月末ということだが?」


 生協側「(12月)28日だと思う」


 報道陣「どうやって知った?」


 生協側「単位生協から連絡を受け、『今対応している』ということで、該当品の日付のサンプルを取り寄せ、全袋を開け、試食確認した。『においの問題はなかった』と回答したが、検査しないといけないということで検査した。最近結果が出たが、物質名は農薬検査をしていないので分からない」

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080130/crm0801301859033-n1.htm

においは無かったらしい。発言はどちらも生協側なのだが…どっちだ?
また、12月28日に発生した事件でありながら検査結果が出たのは最近と言うのは、警察が1週間で結果を出していることを考えるとあまりにも遅い対応のように感じる。
また、「薬くさいにおいがして、吐き出した」と言う割には、下記のように薬物検査をすることに頭が回らないようだ。

 JT側「そういう意味では、どういうことが起こっているか洞察が足りなかった。私どもの検査の状況を言うと、該当商品は平成14年の年末に発売している。これまで添加物の検査などをやってきた。商品の改善を積み重ねてきた。ほぼ毎年、同様の検査をしている。該当の農薬も調査の範疇(はんちゅう)で異常はなかった。においのクレームでは一時対応したが、そこでの農薬検査はやっていなかった。現物の回収が十分にできず反省している」

 報道陣「クレームがあったときだが、異臭に関するクレーム対応では、においを調べるだけなのか。科学物質まで突き詰めて調べないのか」

 JT側「申し出の内容を確認するのが先決。そういう対策をしてきた」

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080130/crm0801301915034-n1.htm

そもそも食べたら吐き出すようなものであったのに、それでも自主回収に応じないと言う態度には首をかしげる。例えば「異臭がする」と言う問い合わせに対するはごろもフーズの対応は下記。

 静岡市清水区の食品会社「はごろもフーズ」は10日、顧客から「異臭がする」などの問い合わせがあった中国産塩漬けマッシュルームを原料とした自社製品の自主回収を始めた。成分検査の結果、健康被害はないとみられる。


 対象製品は「ホームクッキング マッシュルーム スライス」50グラム透明パウチ入りで、賞味期限が2008年8月19日〜10月9日と同年11月27日〜12月17日▽同名製品の130グラム缶で賞味期限が2010年12月2日〜12月6日▽「ホームクッキング マッシュルーム ランダムスライス」85グラム缶、賞味期限2010年12月5日の3種類。

このように「危ないか危なくないか分からないけれど、とりあえず自主回収」と言うのが一般的な食品関連企業の態度だと思うのだが、JTや生協にはそういう考えは無いようだ。対応が遅いことを前提にしてJTの株価動向を見ると、28日以降JTの株価は下がりっぱなし。一概にこの事件と関連して考えることは難しいかもしれないが、事件発覚後から発表前までどんどん値を下げていることに、どうも胡散臭いものを感じてしまう。

 報道陣「出てきた薬物は中国で使われているが、国内では使われていない。JT、生協、それぞれの検査でチェックできるのか?」


 生協側「中国の農薬だが、分析対象の農薬として把握している」


 JT側「検査対象にはしている」


 報道陣「ギョーザが消費者に渡るまで検査は何回あるのか?」


 JT側「工場出荷時で1回、JTの倉庫に入ったら1回、そこで生協に渡ります」


 生協側「この後、薬物がないか、異物がないか、変なものはないか、外見上はかなりやっている。農薬検査はやってないが…」

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080130/crm0801301933037-n2.htm

袋詰めされた商品であるから、袋を開けなくては餃子の外見を判断することはできない。であれば必然的ににおいがするようなものだが、検査項目で無いからチェックしていないのだろうか。「薬物が無いか」と言うことを外見上で判断できるのかも疑問だが…

 生協側「複数の重篤な身体被害がある場合、商品を回収するのが原則。12月の件では原因究明ができず、食中毒でないという検査結果が出ていた。臭気について原因究明できなかった。今回は警察の連絡で複数件あると分かり、即時、渋谷の保健所に報告した。日生協として、即時に回収し、2次被害、3次被害を防いでいきたい」

今回の事件が一次被害らしい。私の感覚ではすでに3度目。

 報道陣「把握していないことが多い。時間をおいてから調べてもらい、30分後ぐらいに記者会見してもらえないか」


 JT側「正確を期すために、もう少し時間をいただきたい。現段階で分かることについては話しているが、どれくらい後に(記者会見で)お知らせできるか、今は分からない」

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080130/crm0801302040039-n2.htm

経営者の本音。これは別にJT側が悪いわけではなく、そもそも経営者は実務に疎いものだ。ならば会見の場に現場担当者を呼ぶなりすればよいのだが、不味い事を言われると困るので参加させてないのではないかと邪推。


ちなみにこちらの記事では、農薬は検査対象になってないと発言したことになっている。

 ジェイティフーズの親会社のJTと、商品を販売した日本生活協同組合連合会(生協)は30日夕、東京都内で記者会見を開いた。

 冒頭、JTの岩井睦雄取締役が「多大なご迷惑をかけておわび申し上げます」と述べて陳謝。岩井取締役によると、国内に届いた商品のサンプルについて、細菌検査と試食は行っていたものの、農薬について調べる薬品検査は行っていないといい、中断をはさんで4時間以上に及んだ会見で、「農薬とは思い至らなかった」と弁明に終始した。ギョーザの原材料を対象にした薬品検査は中国の工場側が年に1、2回行っていたという。

ちなみに産経では会見は3時間半と記載されており、同一の会見について書かれた内容とはとても思えない。こういうのを読むと、私達には事実を正確に知る状態さえ確保されていないようだ、と言うことを痛感する。これが故意なのかミスなのかは分からないが、インタビュー記事くらいはどの会社も同じことを報道してほしいものだ。