相変わらず、道路、道路、道路…

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071212/142987/」について。
自動車輸送以外の手段を考えるべきだ、と言う意見を封じる為に

 十和田湖に行ったことがありますか。鉄道はありません。小坂インターチェンジで高速道路を降りて、山道に入ります。途中の小高い丘の上から見えるのは、一面の樹々の海が見渡す限りうねる姿です。

と言うような条件の地方を態態取り上げる姿勢には恐れ入った。そのような場所であれば確かに現状に於いて効率的な輸送コストの削減には「高速道路料金を下げる」と言う政策を採るべきだろう。しかしそのような極端な場所を取り上げる事で「全ての高速道路を無料化せよ」とするのは余りにも暴論だ。


以下、幾つか意見。
先ず全体に対して。
・自動車を中心とした輸送は、殆どの場合東京を経由する。理由は簡単で、高速道路は東京から各地方にアクセスしやすいように作られているからだ。つまり高速道路の無料化が実現した場合、地方の東京依存はより一層強まる事になる。
アメリカの例ばかり取り上げるが、シベリアに高速道路があるだろうか?東北は冬は寒く雪が多い。雪上や凍結路面における自動車輸送のリスクは計り知れない。であれば自動車輸送よりも比較的安全な鉄道輸送に頼るのが賢い選択ではないか。


以下、気になった部分に関して。

 リサイクルへの国策の不足もさることながら、重要なのは、国内での輸送の不便とコストの高さです。小坂町DOWAのリサイクル施設まではトラックで運ぶしかありません。ところが、最大の都市鉱山である東京から、小坂インターチェンジまでの5トントラック(中型車)高速料金は往復で4万3000円もするのです。


 これでは、中国やロシア極東部に船で運んだ方が安くつくのではないでしょうか。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071212/142987/?P=2

調べ物が得意な割に、中国やロシアへの開錠輸送費については触れないのは残念だ。本当にコストは高いのだろうか?加えて中国やロシアに運ぶ為には先ず日本海側に運ぶ必要があり、その為にかかる陸送コストまで含めれば、決して海外に運ぶ方が安い、とは言い切れないだろう。
また海外に輸出するのは、それが海外であれば使い物になる(=商品になる)からであって、ゴミとして処分されるからではない。20年落ちのカローラは国内では値が付かないが、発展途上国にとっては高級車であり、最新型のWindowsが動かない型落ちのパソコンも、1〜2世代前のWindowsを入れれば現役マシンとして十分利用できる。ならばこういったものを海外に輸出する事は、十分意味のある行為である。
そうすることで途上国との関係を築き、見返りとして天然資源の採掘権等に有利に結び付けられるのであれば、企業の利益だけではなく大きな国益にもなる。それこそ筆者は海外海外と繰り返し述べるのであれば、海外と日本との連携強化による国内産業の創出を見据え、陸運ではなく海運に力を入れるなりの論を展開すべきではないだろうか。リサイクル工場を作るのであればアメリカやヨーロッパなど海外からのゴミをも処理して再利用できるようなシステムを作ってしまえば、それこそ資源の有効活用になろう。何も国内の資源にのみ頼る必要も、陸送にのみ頼る必要も無いのだ。
DOWA十和田湖周辺ではなく日本海沿岸に工場を作るべきだった。詳しくは後述。

 さらに、最寄りの港である能代港から小坂までの80キロほどの距離は高速道路すら全線開通していません。一部の高速道路区間は、秋田県寺田典城知事のリーダーシップで無料になりましたが、計画しかない区間もあります。


 まさに、技術を阻むものは政治です。21世紀の日本は、道路公団民営化という誤った政治の選択をしたために、国土は狭いにもかかわらず、高い交通コストを固定しています。とりわけ、交通の97%を自動車に依存する秋田県のような地方には致命的です。東京都の自動車依存度はわずか30%ですから、都民にはなかなか実感がないハンディです。


 高い国内の輸送コストのために、日本は、技術面では世界最高の環境先進国であり、最大の都市鉱山という資源を抱えていながら、資源の確保と環境ビジネスでの飛躍のチャンスをつかみきれていないのです。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071212/142987/?P=2

産業は地理的条件を無視して興す事はできない。この場合責められるべきは国ではなく、そのように輸送コストの高い場所に大量輸送を必須とする産業を興した企業側の無計画さではないか。海の無いところで魚は取れず、平地が無ければ水田は作れないのと同じように、輸送費の高い所に大量輸送が必要な産業は興せないのだ。
それにここでは自動車輸送のコストのみを取り上げているが、奥羽本線を使えば高速道路を使った場合と同じくらいまで十和田湖近くに運ぶ事が可能だ。東京-十和田を高速道路を使って4万(燃料代を含めれば5万以上か)するのであれば、深夜の鉄道輸送で数十台分を一気に運んでしまうのが、コスト面でも環境面でも優しい手段だと言えるのではないか。駅周辺に中継基地を設け、そこからトラックのピストン運送をするようにすれば、他県の長距離輸送ドライバーを使わずに済むのだから、地元の輸送産業にも貢献できて一石二鳥であろう。
十和田湖周辺の交通網がここ数年で激変したと言うなら話は分かるが、企業側の計画通りに事業が展開できなかった事まで国の無策だと言うのは責任転嫁も甚だしい。

 もし、DOWA小坂町に本社を移したら、DOWAが払う法人税などはもっと生きたお金になるでしょう。寺田知事はさらに秋田県の予算で県内の高速道路無料化を進めるでしょう。


 川口町長は、さらに環境都市小坂を整備することに力を入れることでしょう。コロラド州アスペンのように見事な自然と文化と学術が融合した地方都市ができるかもしれません。もちろんその時は、十和田湖を抱える日本有数のリゾート地になっているでしょうし、世界中からの環境観光のお客さんも絶えないはずです。

法人税が東京ではなく地方に払われればその金が生きたお金になるという理屈は意味不明だ。
増えた税収で一層の高速道路無料化を進めるとあるが、それによって産業が発展しているならまだしも、輸送コストが高いと言って結局産業が興せない云云と述べている。はっきり言って、税金を無駄に使っているとしか思えない。
それに、秋田圏内の高速道路無料区間は八竜IC〜二ツ井白神ICと言う極短い区間であり、十和田湖に延びているものではない。DOWA法人税を秋田に払ったとしても、DOWAの利益にも十和田湖の発展にも結びつかないだろう。それを生きたお金というのか。

 残るのは決断。今までと違う、それだけの理由で必然の変化を避ける余裕は日本にはありません。できない理由を探すのもやめましょう。日本の地方には都市の機能がないとか、東京以外に金融や通信や交通のインフラを整備するのが大変、といった冗談はやめましょう。

前後の文意を汲み取らなければ、この点については大変同意する。地方にインフラが整備できないのが問題なのではない。無秩序にいたるところに金をばら撒きすぎる事が問題なのだ。国によって特定地方を重点的に投資し、「第二の東京」を作り出す事が、東京一極化の緩和になり、地方の活性化に繋がるだろう。
例えば今後アジア向けの輸出が伸びるとするならば、九州や四国、特に瀬戸内海を中心とした産業に力を要れ、製品を直接海外に輸出できるよう海運に力を入れるべきである。輸入-製造-輸出までを瀬戸内海沿岸府県のみで完結できるようにすれば、東京に頼らない経済ブロックを創出する事ができる。
東京湾は既に狭くなり過ぎており、海洋国家として今後今以上の海運が必要になる事が予測されるのであれば、良港整備は欠かせない課題である。もちろん瀬戸内海は気候上夏場の水に恵まれず、大規模な工場を作る事が難しいかもしれないが、そういった問題点を解決する為にも重点的な投資によって、長期的に整備をしていく必要があるのだ。今後10年道路を開発し続ける、と言うような馬鹿みたいな政策ではなく、同じ金を産業を興す事に使うべきだろう。
地方に金をばら撒く事ではなく、こういった事を地方活性化と言うべきものだと私は思っている。