それを「財源が有る」とは言わない

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071017/137767/?P=4」について。
今回は財源についての反論にとどめる。

 この額は英国、ドイツ、フランス、イタリアの道路予算の合計の2倍に達します。しかも、この上に、高速道路のユーザーからは年間2兆5000億円の通行料金を取っています。


 税金と通行料金を合計すると12兆円になります。消費税にも匹敵する額です。英国などは、年間1兆円近い予算で一般道路も高速道路も建設からメンテナンスまでやっているのですから、その10倍以上ものお金を日本は道路に使っているのです。あきれたものです。この巨大予算こそ道路の権力になっているわけです。


 しかも、自動車ユーザーが払う税金のうち、揮発油税や重量税など5種類の税金の合計年間2兆5000億円は、本来の税率に上乗せしている部分です。これが暫定税率の上乗せ分と言われるものですが、来年の3月に切れてしまいます。


 小泉さんは、この部分は道路と無関係のところにも使いたいと言いました。これが一般財源化と言われるものです。でもこれは、自動車ユーザーに還元するからと言って巨額の税金を取ってきたことと矛盾してしまいます。


 そこで、福田首相は、この上乗せ分を取り続けたい、そして、それを主に自動車ユーザーのために使いたいと言っています。


 それならば、上乗せ分の2兆5000億円のうち2兆円を財源に使えば、日本中のすべての高速道路の無料化が実現します。現在残っている旧道路4公団の借金43兆円は、毎年2兆円の財源を30年間充てれば、金利を含めても十分返済できるからです。その残りは、環境や安全対策に充てるべきです。

筆者の案で高速道路を無料化すると、現在12兆円もの道路財源が2.5兆円減の9.5兆円になる試算になる。幾ら道路財源が余っているからと言え、全体の1/5も余っているのだろうか。
もし余っているのだとしたら、余った分の道路財源は高速道路の無料化に使うのではなく、減税すべきだ。無理に使い道を考える必要は無いはずだ。高速道路の無料化がどれだけの経済効果を及ぼすかは分からないが、低所得者を対象とした2兆円の減税政策を打ち出した方が遥かに経済効果が高いと思うのは気のせいだろうか?
それに現状のままでは財源が追いつかず、このままでは2025年には消費税が17%になりうるとの試算も有る中で、「余っている既存財源を高速道路の無料化に使え」と主張するのは如何なものか。

 ですから、前回のコラムでは「欧米の一部で実施されているように、混雑緩和のために大都市部だけは料金を取ったり、時間や混雑に応じた料金の徴収をするロードプライシングを行ったりすることです。もちろん、料金は財政収入になります」と述べています。大都市部では、有料を維持すべきだと思います。原則無料、大都市の一部だけ有料、というのは英国や米国でも採用している方式です。

この点には賛成だが、

 ETC(自動料金収受システム)を活用すれば、料金所渋滞は減り、また時間帯によって料金を変えることも簡単になります。

については違和感を感じる。高速道路の交通渋滞と言うものは高速道路内だけで完結できる問題ではない。下道の整備が追いついていない為にインターチェンジで渋滞すると言う事例は多く、料金所の混雑が解消されれば渋滞が軽減されると言うのは実際に高速道路を使った方であれば疑問に思う点だろう。
また、

 もちろん、首都高速阪神高速の料金を取れば財源になります。今と同じ料金なら年間4300億円の収入になります。これは現在年間5900億円の全国の高速道路の維持費のかなりの部分を賄える額です。

と書いて有るが、上記のような収入が無い場合、どうやって道路保持を考えているのだろうか?「収入が無ければ税金で修理すればよい」とでも言うつもりか?
それも

 しかし、上述のように私が首都高速阪神高速であえて料金を取るべきだと主張するのは、渋滞を避けるためです。夜間など交通量の少ない時間帯の料金は下げるべきです。財源はあるのですから、それも可能です。 

とした場合、先述した年間通行料がどれだけ減収になるのかという点について語られていない。交通量を値下げした場合、年間維持費を賄う予定だった財源が圧倒的に不足しだす、という事にはならないのだろうか。



道路特定財源と言うものの存在が古い考え方であり、一般財源化するにあたって

でもこれは、自動車ユーザーに還元するからと言って巨額の税金を取ってきたことと矛盾してしまいます。

と考えるのはナンセンスである。
自動車ユーザーも国民であり、自動車は国のインフラの一つである。都市計画に当たっては考えざるを得ない重要なファクターであり、周辺地域の環境面や自動車を使わない方の健康面への影響も大きく、道路特定財源として徴収しているものを道路の建設のみに使うという事自体、異常なのである。
少なくとも交通事故等によって障害を持った方が不便なく生活できるようにする、健康被害にあった方が安心した医療を受けられるようにするなど、道路行政にかかわりの有る福祉面で使用できるようにすべきであろう。
筆者風に言うのであれば「もし田中角栄が今生きていたら、真っ先に道路特定財源一般財源化するだろう」になると思うのだが…そもそもガソリン税自動車税道路特定財源として認識して払っている方が一体全体のどれだけになると考えているのだろうか?


高速道路無料化は筆者の考える地方活性化の為の手段であって目的ではなく、高速道路を無料化できる財源があるなら、それを使って別の地方活性化の手段を考えても良い筈だろう。少なくとも高速道路の無料化が地方の活性化に繋がる事とは私は思えない。
誤解が無い様に書いておくが、以前も書いたとおり、私はアクアラインの無料化には賛成であり、それによって木更津周辺が活性化することにも首都圏の交通事情が改善される事にも異論は無い。が、木更津は「地方」ではなく「開発の遅れている首都圏」であり、アクアラインと木更津を例にとって他の高速道路と地方とを語ることはできない。