食料自給率

農業を日本の先端産業にする」について。
先ず先に非礼を詫びる。先日、「どうせ高速道路の無料化を唱えるだけだろう」と発言したが、見当違いであった。氏の国政に対する提案はそればかりであると思い込んでしまった。軽はずみは批判、申し訳ない。
とは言え、今回の氏の提案について賛成できると言うわけでは無いので、以下反論を述べたいと思う。
氏の提案は7つなので、一つ一つ区切って記述する。

1 日本の農地ができるだけ使われるようにする

 このためには、減反政策はやめましょう。農業予算も、土木事業に当てる部分は減らしましょう。


 その代わりに、農業を行う人に補助金を思い切ってつけましょう。別に大規模農家だけに出す必要はありません。農業生産を行う人に出すのです。ただし、悩ましいのは農家すべてを平等にするのか、それとも生産規模に比例させるのかです。簡単な答えはないでしょう。両方の要素が必要になります。


 農業生産を行うと、ある程度は生活が保証されるようになれば、農業の担い手は増えていくでしょう。

(略)


 フランスでは農家所得の8割は補助金であり、米国でも3割に達するといいます。しかも、米国最大の農業地帯であるカリフォルニアの農業を支えているのは、メキシコからの低賃金の季節労働者、もしくはより悪条件で働く違法労働者です。フランスと米国の食料自給率を支えているのは補助金と非合法移民なのです。


(略)


 わが国が自衛のために、食料自給率を向上させること、そのために農家への直接の所得保証をすることは、国民の食料の確保のためには必要なコストではないでしょうか

太字にした部分に対する反論としては、下記のニュースが妥当だろう。

 民主党前原誠司副代表は、10日発売の月刊誌「中央公論」7月号誌上で、自民党与謝野馨・前官房長官と対談した。


 前原氏は小沢代表の下で昨夏の参院選公約としてまとめた「参院選マニフェスト」について、「仮にこのまま民主党が政権を取っても、まともな政権運営はできない」などと述べ、実現性に強い疑問を投げかけた。


 民主党参院選公約で、農家への戸別所得補償など主要政策の経費を総額15・3兆円と試算し、財源を補助金の廃止などでまかなうとしている。


 前原氏は、道路特定財源暫定税率の廃止など新たな公約を加えると約18兆円かかるとしたうえで、「行革だけによる捻出(ねんしゅつ)は、絶対無理だ。マニフェストをまとめる時、当時の政策責任者の間では、財源の根拠が希薄だとの難色が示されたと聞いているが、最後は小沢さんの『エイヤ』だった」と、小沢氏の責任を指摘した。


 また「民主党が最もしてはいけないのは、国民に耳当たりのいいことばかり言い、仮に政権を取った時に『やっぱりできません』となること。すぐに自民党に政権が返る。最悪だ」と述べ、参院選公約の抜本的見直しの必要性を強調した。


 前原氏は7日にも、京都市内での会合で、農家への戸別所得補償制度について、「ばらまきだという批判があるが、私もそういう気持ちが強い」などと述べた。

民主・前原氏、小沢マニフェスト批判…中央公論7月号で

この方は民主党のネクスト国土交通大臣らしいので、民主党の試算内容を用いて語っても問題は無いだろう。その前提で話を進める。
食料自給率の維持の為に補助金が必要であると言う点には賛同するが、その費用が15兆円(国の税収の30%程度)ともなると話は別だ。そこまでしないと自給率が維持できないと言うのは、根本的な生産体制に不備があるとしか思えず、それは補助金云云で解決すべき問題ではないだろう。それは例えば蛇口が壊れて水が漏れるからといって、蛇口を直さずに水道料金の補填として補助金を与えるようなものであろう。真に行うべきは蛇口の修理であり、それに対しての補助金の拠出であれば納得もできるが、継続的に補助金を出し続けると言うのはおかしな話である。
税金による補助金の拠出は、最終的に税と言う形で国民に課せられるのである。農作物の価格を上昇させまいと補助金を使い、結果所得税・消費税などの税率を上げることになるのだとしたら、我我の生活が楽になる事はありえない。本末転倒も甚だしい案と言えるだろう。


またフランスの8割の農家が補助金によって運営されていると言うが、補助率がどれくらいかと言う事については触れられていない。フランスに於いても税収の3割が農家の補助金に消えて行くというのだろうか。どうも想像が付かないが。

2 日本の農産物の値段を下げ品質を上げる

 米の減反措置は米からの収入を保証するためのものでした。しかし、農家の中で最も数が多く約半分を占める副業的農家は、平均総所得が470万円、そのうち農業所得は30万円にしか過ぎません。しょせん、米が高くても収入を農業に頼っているのではないのですからあまり意味がないのです。


 それよりも、減反補助金をなくし、生産調整をなくし、米でも他の作物でも思い切って生産すれば日本の農作物は安く品質が上がります。農家の収入は直接の補助金で保証します。生活のかなりの部分の保証があれば、農家は品質と価格の両面での競争を始めるでしょう


 今よりさらにおいしい農産物の値段が下がれば、日本の消費者は日本の農産物にもっと切り替えるでしょう。特に、米の値段が下がれば、お米を炊いて食べるのはもちろん、値上がりが著しい小麦粉に代わって米粉を材料にした麺類や饅頭、パン類、酒、焼酎、飼料の開発も進むでしょう。外国の穀物が高騰する今がチャンスです。

自給率と言う問題からすれば、現在自給率の低い穀物類を計画的に生産すべきであって、儲かるからと言って好きなものを勝手に作られては困る。下記の提案にもあるが結局「儲かる作物を国外に売る」と言う事に繋がりかねず、農家の自主的な生産物決定は自給率に直結しないのは明白であろう。
また、農家の収入が補助金で保証されれば価格面での競争が始まると言うのもおかしな理論だ。収入が保証されていたら価格競争などする必要が無いと思うのは素人考えだろうか?例えば生活保護受給者が最低限度の生活が保障されている為に自立しないという問題をどう考えているのか。


国土的な理由により、日本は稲作に非常に向いている土地だと思う。現在は飼料米への転作なども行われており、現在小麦に頼っている部分を米で補う事は可能になっていると言える。

 農水省は13日、食用米の生産調整に協力し、飼料米など食用以外のコメに転作する農家を対象に、新しい奨励金制度を設ける方針を固めた。供給過剰に陥っている食用米の生産調整を着実に実施するのが狙いで、本年度の補正予算で要求する方針だ。
 2007年産米の作付面積が31府県で計画より過剰となり、06年産米の28府県を上回った。このため余剰米が23万トンに上り、米価が大幅に下落。政府は米価対策の第1弾として34万トンの備蓄米を買い取ることを決めたが、飼料米への転作奨励金はこれに次ぐ措置となる。
 現行の奨励金は麦や大豆への転作が中心だが、農水省は今後、飼料向けやバイオ燃料の原料向けなど食用以外のコメにも軸足を置く方針。「食用も飼料用も水田でつくるため、麦などが育ちにくい地域でも転作しやすい。需要も高い」(同省幹部)との判断による。

飼料米への転作で奨励金 農水省、補正で要求へ

3 日本の農業の担い手を増やす

 お坊様と農家は世襲。いつの間にか、日本社会はそんな慣習を作り出しました。どちらの職も、どうも本業がおろそかになっているところが似ていないでしょうか。志を持った農家以外の出身の若者が、農業に従事できるようにすることが肝心要のことです。そのために必要なのは、もちろん農業教育です。経営者教育のために、今よりも充実した農業経営教育機関が必要です。


 でも、一つの問題は、外から来た人たちが、農地を持って自作農になることが難しいことです。もちろん、資金の問題があります。かといって、大会社が資金力に任せて農地を買い漁り、そのうえで短期的な収益ばかり追求したりしたら日本の農業は荒れてしまいます。やはり、欧州やかつての日本と同様に、家族や組合が中心で、篤農家が農業を守り発展させるのが、長期的には農業も環境も村落共同体も守ることになります。


 そのために必要なのは、あくまでも農業者の視点に立ち、農業者から発展した個人、組合、農業生産法人や株式会社を中心とした発展の形です。そこでポイントになるのが、農地や労働の提供と販売やマーケティングや品種開発、そして、大規模な資金調達などを組み合わせたフランチャイズ方式の発展です。この点は後で詳しく述べます。資金や経験がない人でも農業に参加できたり、農業企業のサラリーマンになったりといった様々な関わり方を作り出して、日本の農業の担い手を増やすことです。

太字にした問題点については同意する。私も指摘されたが、農地法によって新規に取得できる農地の大きさは50アールに制限されている事が新規参入への障壁となっている。ならば、この点を改正すればよいだろう。
しかし氏の提案については疑問を感じる。氏の言っていることは現在各農協のような集団によって実現されている事ではないだろうか。また旧来の篤農家による農村経営は民主主義社会と相容れない考え方であると言う事は理解してもらいたい部分である。篤農家とは言葉を変えれば地方領主であるのだから。

4 食の産業に学ぶ

 農業のお隣と言っていい、日本の食の産業は、農業と違って全くの自由競争の中で、素晴らしい発展を遂げてきました。


 ミシュランで星をもらう実力のある名店は、東京はもちろん、全国にもっとあるはずです。和食、フレンチ、イタリアン、中華、エスニック、からスイーツまで、日本人は世界中のものを作る天才です。かなりすたれたとはいえ、全国各地の名料亭もまだ健在です。


 B級グルメと言われるラーメンやカレーやお好み焼きなどの世界でも、大変な匠の技の競争が行われています。面白いのは、そうした庶民的な単品商売の方が、高級な店よりも儲かることです。


 かと思うと、様々なチェーン展開の外食産業が花開いています。マクドナルドとケンタッキーだけだった外来産業が、今では完全に日本的な発展をしてきました。


 同じブランドで安定した味とサービスと安さを提供する店があれば、実は経営は同じなのに巧みに独立した様々な種類の料理を全く違う雰囲気で提供するところもあります。しかも、ミシュランで星をもらう高級店もピザや定食屋さんも提供する経営者もいます。


(略)


 そこに流れるのは、徹底してお客さんが求めるものを提供し、儲けを追求するというビジネスの発想と、自分がおいしいものを食べさせたい、という頑固な職人のこだわりの間の緊張です。どちらも求道の域にまで達していると思います。


 であれば、農業という最高の物作りでも、食の世界で花開いた日本人の独創性を発揮したらどうでしょう。


 その大前提は、自由競争です。ただし、農家には、減反補助金をやめ、公共事業を減らした財源を使って手厚い生活保証をして、安心して競争できる環境を整えるのです。これは、英国や北欧の経済の成功に学ぶやり方でもあります。


 20年前のサッチャーレーガン流の小泉改革路線では、小さな政府と自由競争の両方を掲げ競争の敗者はどん底に沈みかねない社会を作りました。それでは、農業の分野では競争は起きないでしょう。

上記1の提案と被るが、手厚い生活保障をされたら競争など起きない。ちなみに上記に挙げられている数数の食べ物は小麦を原料とするものばかりなので、2の提案と矛盾するとも感じる。

5 グルメ型農業のすすめ

 そもそも消費者のニーズ調査やマーケティングといったほかの分野では当たり前のことも、農業では例外です。それでは有効な商品開発もできないでしょう。


 まして、海外の消費者に向けた効果的なマーケティングなど、欧米の農業者が当たり前にやっていることも、日本では例外です。海外といえば、行政主体でイベント的にやることはあっても、民間で積極的に進めるところが少ないのです。


 他の産業では当たり前にやっていることを積極的に取り入れればいいのです。何も全部自分でやることはありません。生産、開発、流通、マーケティング、資金調達、などそれぞれの分野に日本には優れた専門家がいます。農家は農協任せにしないで専門家を活用すべきです。そもそも、農協自体がそうした専門家を使うのです。


 全体として言えば、生産から消費までのバリューチェーンを近代化し、ここで問題点として挙げたことはすべて実行すべきです。そうすれば、バリューチェーン構築を提供する業者の間の競争によって、生産者にとっては中間マージンが少なく、売り上げの上がる業者への委託が進むでしょう。他の産業では常識となった流通の合理化です。


 そのために農協の半独占状態から解放し、バリューチェーンの構築を手伝う人を参入させるべきです。日本の農業を発展させ、日本の食を守るために必要なことです。むしろ、農協自体が、外部委託によって業務の効率化とスリム化の恩恵を受けるはずです。


 これまでの生産一辺倒の発想を180度転換し、消費者の視点から農業を組み立てるべきでしょう。行政はそのために予算を使うべきです。国内と外国の双方で競争力のある農業に変身するのです。


 そして、行政ならではの仕事としては、フランスやイタリアのワインなどに見られるように、原産地や製造法などについての虚偽記載の取り締まりや公的な等級表示など、公的権威が全体としてのブランド価値を高めることを行うべきです。

ちなみに地方の農作物が海外に出荷されている例として、以前青森を取り上げた。今後各地の特産品はこのように海外進出を進めて行くというのは非常に重要なテーマであると私も思う。
自給率を上げるべきだ」という当初の目的からは大幅にずれていると思うが。

6 フランチャイズ型農業のすすめ

 そんな夢のようなことができるものか、現実の農家はお年寄りばかりだぞ、というお叱りの声が聞こえてきそうです。多くの農家にも農協にもそんな競争力がないのが今の現実です。かといって、今の農家が廃業したり農地を他人にすぐ売ったりするわけでもないでしょう。そういう現実に対応するためには、外食産業に多いフランチャイズの仕組みを農業に応用し発展させてはどうでしょう。


 個々の農家や農協の事情も千差万別でしょう。営農意欲はあるが自前での競争ができないところ、営農も誰かに任せたいが農地は手放したくないところ、簡単な農作業ならやりたいがきついことはできなくなったところ、などです。


 そうした個々の事情に応じて、多様なフランチャイズ型の農業を展開するのです。あるところでは、品種開発やマーケティングブランディングや販売を委託し、農家は生産に徹する。ある場合は、農家は農作業の一部あるいは全部を外部に委託する。ある場合は、農家は農地の貸し付けだけを行う、といった形です。


 実情に応じた農家とのかかわり方によって、農家が高齢者であっても農地が耕作放棄地にならずに生産性の高いフランチャイズによって運営されることになるでしょう。


 もちろん、多くの農家の不安の種である農地を将来ちゃんと返してもらえるのか、という問題については、行政権限を与えられた公的な機関による貸借関係の保証などが必要でしょう。


 フランチャイズ運営側には、新しく多様な仕事が生まれます。生産者から消費者までを結ぶバリューチェーンの運営という様々な分野が新しいタイプの雇用とビジネスチャンスを生むでしょう。

農地に対する相続税の免税措置等を考えれば、現在の農地持ちには非常に有利であるが、新規に参入して今後農業を続けていこうとする者には非常に辛いことには変わりない。農家の育成と言う観点から言っても経験や技術的な継承が行われるとも思われず、新たなワーキングプアを生み出すだけではないか。
また1の提案などに挙げた補助金による保障を何処まで適用させるのかと言う問題も出てくる。

7 たたき上げ農業経営者のすすめ

 中には、エンジニア出身で農家との間に様々な契約関係を結んで何百という農家をまとめて大きな農場組織にしている新福さんという方や、豚2頭から8万頭近くにまで自分で開発したトータルな方法で生産規模を拡大した間さんという方などがおられます(お2人とも宮崎県の都城で活躍されています)。


 農業は、デスクワークと違って、脳みそと全身をフルに使う、極めて難しい産業です。気まぐれな自然と消費者を相手にし、大地を生かしながら、農産物を作ることは一朝一夕にはいきません。自分のライフワークにし、子供に受け継ぐというあり方が自然です。人事異動で簡単に持ち場を替えるわけにはいきません。


 たたき上げ農業経営者こそ、農業を継承する人たちですし、次の世代を育てる人たちです。その多くは、農協の秩序の中で様々な妨害を受けてきました。今も、資金調達や事業展開に様々な制約があります。

 これからはそんな時代ではありません。農協もそのほかの農業経営者も切磋琢磨し、日本の農業を発展させていくのです。そのためには、今も残る不合理な規制や慣習をやめ、日本の農業と農業人材を伸ばす人たちを社会全体で支援するための枠組を作るべきです。

篤農家による経営を謳っておきながら、旧来の規制や慣習を撤廃しようとするのは無理がある。また農協を否定しながらも新福さんのような農場組織を賞賛するのも納得が出来ないし、6の提案のようにフランチャイズ経営と言うのは「人事異動で簡単に持ち場が替わる」状態ではないか。



見方がうがっているのかもしれないが、各種提案が夫夫を否定しあっているように感じ、一貫性を感じない。これらを組み合わせてそれぞれの風土に合わせた適切な農業経営が理想だと言うのかもしれないが、「今も残る不合理な規制や慣習をやめ」の一言で台無しである。
5の提案等は今の農家に非常に有効な手段だと思うので、私も是非実現して欲しいのだが…