政治にもトレードオフの概念を

「トレードオフの概念は日本に無いのか」 三菱東京UFJ銀のシステム一本化報道に思う」より。

 以前書いたことがあるが、多少のトラブルが起きても仕方ないと居直っているわけではない(関連記事「システムは時には止まる」)。トラブルが無いようにシステム開発の現場はできる限りの努力をするのではあるが、トラブルをゼロにすることは不可能だと言いたい。情報システムのソフトウエアとデータには無限と言ってよいほどの組み合わせがあり、すべてをテストすることはできず、今回のように動かしてみて出てきた問題を見つけ、修正していくしかない。何が何でもゼロにしろ、と命令すると、現場が疲れコストがかさむばかりだ。テレビや新聞は、三菱東京UFJ銀行のATMだけではなく、セブン銀行やゆうちょ銀行のATMもすべて止めて接続テストを繰り返せ、とでも言うのだろうか。

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 日本人の好きな過剰品質の話ととらえました。3300億円のうち、いったいどれだけの金額が、99.9%の成功確立に9を更につける為に投じられたのでしょうか。メガバンクのシステムが障害を起こした際の影響が大きいことは確かですが、切り戻せば良いことです。この投資は銀行顧客の費用から最終的に賄われ、更には国際競争力を高めるために投資できたかもしれないものです。「絶対に止まらない」ことを求める事がいかに物事の優先順位を狂わせるかを、規制当局・銀行利用者ともに考える必要があるのではないでしょうか。


 おっしゃる通りである。規制当局と銀行利用者に加え、新聞・テレビ「ともに考える必要がある」。トレードオフとは両立できない「物事の優先順位」を付けること。実は、この言葉の日本語訳はない。訳が無いのはともかくとして、トレードオフの概念が無いのは困る。「絶対に××するな」は禁句である(関連記事)。不可能を追求し、優先順位を狂わせないようにしなければならない。

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私もシステム開発に携わっている人間として、数千・数万人月掛けたシステムであっても「必ず動く」と言えるものが無い事を知っている。であるので、それよりも遥かに少ない人数によって計画立案され、ろくなテストが行われたことの無いような各制度の運用に穴が無いはずが無いとも思っている。以前のエントリーにも書いたが、世の中に完璧なシステム/制度は存在し得ず、完璧であることを前提とした訴訟などと言うのは滑稽極まりない。尤も政治の場合、デバッグ担当である国会議員や諸官庁の方方がバグをバグと認めず、延延とデバッグをし続けないことは大きな問題なのだが…


政治において「国民全員が幸せに」と言うのは理想であろうが、40兆程度の収入が無い国家に於いて各種制度の維持の為に80兆もの金を掛けるというのは間違っている。「収入が足りないから制度が維持できない為、増税するしかない」等と言うのはもはや戯言である。
政治にもトレードオフの概念を持って欲しいと、切に願う。