ディフォルメによる情報劣化

 来年5月に始まる裁判員制度で、日本法医学会(理事長・中園一郎長崎大教授)と最高検は、市民から選ばれる裁判員心理的負担を軽くするため、遺体の写真の代わりにイラストやコンピューターグラフィックス(CG)を使った立証を積極活用する方針を決めた。学会は、司法解剖の結果を裁判員に分かりやすく伝えるため、初めての一般向け法医学用語集の作成にも乗り出した。


 事件性が疑われる遺体の死因を究明する司法解剖の結果は鑑定書にまとめられ、裁判の証拠になるが、残酷な遺体や傷の写真も添付される。難解な専門用語が並ぶことも多く、学会と最高検は昨年7月に研究会を作り、司法解剖の結果をいかに裁判員に説明するか協議してきた。


 遺体や傷の写真は裁判員にショックを与える恐れもあることから、写真の代わりにイラストを鑑定書に添付したり、鑑定医が法廷で証言する際にCGを使う案が浮上。学会内には、傷ができていく過程を連続イラストで表すアイデアを提案する学者もおり、裁判員が目で見て分かる説明方法が検討されている。

<裁判員制度>司法解剖の遺体写真、イラストやCGも活用

こういう時にこそ積極的に「アニメは所詮アニメ」と言うような批判がされてもよさそうなものだが。


イラストの精度がどのようなものかは分からないが、利用目的からすれば写実的にはならないだろう。つまりは抽象化(=ディフォルメ)されるわけだ。その場合、抽象化作業に携わる方の意見が多分に反映されることになる。恣意的な変更も可能だろう。極端な話、ゾウのぬいぐるみはゾウらしくはあるがゾウではないということであり、「群盲象を撫でる」の言葉にあるように「何をもってゾウとするか」と言うのは人によりまちまちになりがちである。
裁判資料から受け取れる情報が制限されてしまえば、正しい判断をすることができなくなるだろう。


そこまでして裁判員制度を実施する目的があるのだろうか。