機会を奪うな

高速道路の借金爆弾を処理せよ 実態に則して国の借金に切り替え財源確保を」について。

 民営化と言いながら、借金は国の丸抱えなのです。“機構”という不明朗な国営ペーパーカンパニーへの借金の「飛ばし」をやめ、実態通りに国の借金に切り替え、そのうえで返済の財源を確保すべきです。


 もちろん、その時は、通行料金を取る根拠はなくなりますから、民営化した高速道路会社や高速道路機構は廃止できます。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080303/148648/?P=3

氏は税金が沸いて出てくるようなものだと思っているのだろうか。


氏が連載してきた記事での言い分をまとめると「暫定税率をそのままにし、用途を高速道路の借金返済に充て、高速道路を無料化する」と言うことになる。高速道路を無料化することで輸送コストが減り、経済が活性化するということだ。国の借金はそうして増えた税収によって賄うべきだということなのかもしれない。


私の意見は反対で、「暫定税率をそのままにし、用途を国債発行額の減額等に充て、高速道路を無料化しない」である。高速道路を無料化せずとも輸送コストの低減を図ることはできるのだから、そういった点は企業努力に任せるべきである、と言うこと。そういう企業努力自体が経済の活性化を促すからだ。
例えば企業の設備投資等はその最たる例であり、企業競争力を増すために企業が自主的に努力すること自体が経済活動を生むのである。また例えばIT化などという機会を新しいビジネスチャンスとして捕らえ、様様な雇用が生まれてくる場合もある。であれば、この輸送コストの高い現状を打破する為の企業努力が新しいビジネスチャンスになっていない筈が無い。そういった機会を税金を投入することで潰すのは問題ではないか。
それよりもガソリン税として徴収したものを使って、国の借金を減らすなり、地方産業の振興に充てるなりすれば良いだろう。そうやって産業が興れば高速道路の利用者数も必然的に増えることにならないだろうか。


それに今後、ガソリンの値段が現状の1.5倍程度に膨らんだ場合、今度はどのような方法で陸送を擁護すべきだと訴えるのか。ガソリン関連税の撤廃、もしくは自動車税の撤廃とでも言うのか。輸送にはコストがつき物であり、輸送コストが高いからと言って税金を投入して特定の輸送コストのみ下げると言うやり方は先見性がある対処方法とは言いがたい。燃料費の増大によって輸送コストの増加に喘いでいるのは空運も海運も同じことであろうが、氏はこれらに対して「寄港代を安くし、物流を活性化すべき」と主張する訳でもない。
高速道路の無料化こそが国の発展に繋がる、と言う主張はあまりにも視野が小さすぎるのではないか。


もちろん高速道路を無料化することで経済活動が活発になりそうだ、と言うことは理解できる。しかしそれを国民全員の負担とする必要は無いだろう。また高速道路が無料化することによって関東圏への一極集中がより一層促される恐れがあり、ますます地方格差と呼ばれているものは増えてくるのではないか。費用や時間と言った輸送コストが高いからこそ地方は独自の経済ブロックを形成することができている面があり、その経済ブロックを成長させていかない限りは地方の活性化に結びつくことも無く、国力の増加も図ることはできないだろう。


織田信長が関所を廃止したことが当時の経済発展の大きな役割を担っていたと言う点を否定するつもりは無い。しかし反対に江戸時代は関所を設けることで地方経済の発展が見られたこともまた事実である。今の時代どちらがより地方の活性化に繋がるのか、と言うことを考えてみても良いのではないだろうか。
そういう意味では道州制の導入と言うものは、各経済ブロックごとの自立を促す手段となりえるのかもしれないが…