生活保護について、統計から考えてみる

参考にしたのは下記の資料。
厚生労働省統計表データベースシステム
第3-4表 被保護実世帯数, 保護の種類×年度別
第3-5表 被保護実人員・保護率, 保護の種類×年度別
第3-10表 日本の国籍を有しない被保護実世帯数・実人員, 年度別
総務省統計局
平成17年国勢調査の確定人口に基づく推計人口の遡及改定
法務省入国管理局
平成17年末現在における外国人登録者統計について
国税庁
民間給与の実態調査結果


「第3-5表 被保護実人員・保護率, 保護の種類×年度別」と「第3-10表 日本の国籍を有しない被保護実世帯数・実人員, 年度別」とを纏め被保護者実人員を割り出してみると、下記のようになる。ちなみに、ここでは「日本国籍を有しない人」を「外国人」と定義する。

被保護者実人員における外国籍者の比率
2000 2001 2002 2003 2004 2005
被保護実人員 1,072,241 1,148,088 1,242,723 1,344,327 1,423,388 1,475,838
うち外国人 394,301
32,858
421,651
35,138
460,686
38,391
503,761
41,980
539,520
44,960
563,432
46,953
外国人員比率 3.06% 3.06% 3.09% 3.12% 3.16% 3.18%
これによると、年年生活保護受給者は増えているが、そのうち外国人の占める比率も増加していると言うことが分かる。これは外国人登録者数の増加による理由も無視できないが、外国人の生活保護受給率が増加していることが原因である。これではまるで「タダ飯食らい」に日本に来ているかのようだ。
外国人の生活保護受給率
2000 2001 2002 2003 2004 2005
外国人登録者数 1,686,444 1,778,462 1,851,758 1,915,030 1,973,747 2,011,555
生活保護受給者数 394,301
32,858
421,651
35,138
460,686
38,391
503,761
41,980
539,520
44,960
563,432
46,953
生活保護受給割合 1.95% 1.98% 2.07% 2.19% 2.28% 2.33%
この調子では、今年(2008年)は30%を越すだろう。


生活保護受給者数が2005年時点で2000年の約1.5倍に膨れ上がる中で、生活保護費も予算ベースで1.2兆円から1.9兆円へと膨れ上がっている。2000年から2005年に掛けてサラリーマンの平均年収は461万円から437万円へと減収になっており、当然の事ながらサラリーマン1人当たりの年収における生活保護費負担率は大幅に上がっていると言うことだ。
結果、生活保護費と最低賃金が逆転するようなことにもなる。

 課題として指摘されているのが、地域別の最低賃金生活保護費を下回るケースがあることです。県庁所在地で働く労働者を比較した場合、例えば北海道では、最低賃金で1か月(1日8時間で22日間労働)働いた時の社会保険料などを差し引いた手取りは約9万8000円。一方、生活保護費は約11万8000円(12〜19歳単身者)(数値はいずれも2005年度)で、最低賃金が約2万円、下回っています。

最低賃金の引き上げが格差の是正になるか否かについてはこのサイトでも語られているが、必ずしも良い結果に成るという訳では無さそうだ。そもそも最低賃金がいくらか上がったところで労働者の給与が跳ね上がる訳ではなく、それは税収の増加にも繋がらない。
生活保護費引き下げ厚生労働省が発言したのは去年のこと。

 厚生労働省は30日、生活保護費のうち食費や光熱水費など基礎的な生活費となる生活扶助の基準を大幅に見直し、生活保護費全体の引き下げを決めた。具体的な引き下げ額は来年度予算編成の過程で詰める見込み。


 昭和59年から続く算定方法を検証する専門家の検討会が同日、まとめた報告書によると、平成16年に行った全国消費実態調査と現在の基準額を比較したところ、収入が低い方から10%以内の低所得者世帯で夫婦子1人の場合だと約1600円、70歳以上の単身世帯だと約1万2000円、基準額が上回っていた。このため、検討会は基準額の引き下げが可能と指摘した。

平成19年度予算案では生活保護費に2兆円弱を支出している。確かに去年(2兆円超)よりも下がったが、社会保険緋や社会福祉費などが増加したため、社会保障関係費用は5670千億円の増加になっているし、平均給与が下がっていることを考えれば国民一人当たりの生活保護費の負担割合は変わっていないと見るのが妥当だろう。


ホームレスの方による集団生活補償請求*1も起きている。

東京の隅田川沿いで暮らすホームレスの人たちが今月、支援者や司法書士らの手助けで、相次いで台東区生活保護を申請するなど、東京ではことしに入ってホームレスの人たちによる集団での生活保護の申請が、60人以上に上っています。支援グループによりますと、これまではホームレスの人が1人で生活保護を申請しようとしても、その方法がよくわからなかったり、行政の窓口で難しいと言われてあきらめてしまったりするケースが多かったため、集団での申請を始めたということです。さらに、これまでは生活保護を受けることができても、民間の施設や宿泊所で生活しながら受給するケースが大半でしたが、今回は生活を本格的に立て直すため、アパートの入居費用を生活保護から支給してほしいと求めています。今回、集団申請した人のほとんどは、生活保護の支給が認められましたが、アパートへの入居については、多くがまだ結論が出ていないということです。支援グループでは「絶対的な貧困のなかにいるホームレスの人たちが、生活の基盤を安定させ、社会復帰を目指したいという気持ちに応えてほしい」と訴えています。

こうやって、全国で2.5万人も居るとされているホームレスの方方が次次に生活保護申請をしていった場合、果たして現行予算案内で賄いきれるのだろうか?各地方自治体の負担も増えることになるが、生活保護受給者数・ホームレス数の共に多い大阪府は、厳しい財政状態の中やっていけるのだろうか?

 大阪市は21日、一般会計で1兆5925億円、全会計で総額3兆8560億円の08年度当初予算案を発表した。昨年12月に就任した平松邦夫市長が「行財政改革のさらなる推進」と「子ども、地域、大阪が元気になる施策の重点化」を掲げて初めて編成。一般会計は前年度比337億円(2.1%)減と、7年連続で前年度を下回る緊縮型。一般会計の歳出では、生活保護費の増加などで扶助費が初めて全体の4分の1を突破した。市長の判断で、乳幼児医療費や妊婦健診の公費負担拡充などを盛り込んだが、財政難から独自色は限定的となった。


そもそも生活保護受給に関して何もデメリットがないというのが問題だ。生活困窮者全員に無条件で支給されるということがシステムとして既に破綻しているのだ。極端な話、国民の1割が生活保護を受給していたら国が成り立たないだろう。
例えば生活保護費というものを「金利0の借金」とするだけで、受給率は大幅に低減されるのではないか。加えて資産等を担保にし「支給総額は担保金額*1.5まで」とすればより効果的である。もし資産がないなら、支給した生活保護費を回収できるまで国が斡旋する短期労働に従事させる。諸事情によって働けない方には無償で生活保護費を支給するが、その生活保護費の支出に関しては税金のように出納帳を作成させ、年1回の提出を義務付ける。
ここまでするのは行き過ぎかも知れないが、「我我の税金を無駄に使っている公益法人にメスを入れる」のと同じように、生活保護費もまた我我の税金から支出されているものなのだから、その用途を明確にし、本当にその生活保護費を受けるに相応しいかを問うのも重要なことではないか。チェック機能が働かなければこのような不正受給を防ぐことは無理だ。

 北海道滝川市の元暴力団組員らが、同市から生活保護費など約2億円をだまし取っていた事件で、旭川市指定暴力団山口組系旭導会に、詐取金の一部が流れていたことが27日、道警の調べでわかった。


(略)


 調べによると、詐欺容疑で逮捕された元暴力団組員、片倉勝彦被告(42)(覚せい剤取締法違反の罪で公判中)は、生活保護費のほか、札幌市の介護タクシー会社役員らと共謀して生活保護受給者に認められている通院時のタクシー料金など、計約2億円を詐取。片倉被告が手にした約7500万円のうち、約3000万円は遊興費や高級車の購入費などに充てていたことが判明したが、残る約4000万円の使途が分かっていなかった。その後の捜査で、道警は介護タクシー会社の銀行口座の送金状況や供述などから、片倉被告側から同会に約180万円が流れていたことを突き止めた。道警によると、旭導会は山口組の2次団体で構成員は約400人。旭川市などを拠点に活動しており、道内では2番目の規模。

現状のシステムでは「2億円もの生活保護費はありえない」と判断して生活保護費の削減を求めたり至急を停止したりと言うことができないと言うことだろう。一斉捜査に乗り出したと言うことは、この問題は氷山の一角なのだろうし、他県においてこのような例がないとも言い切れない。


私の父母の代では「生活保護受給者になることは物乞いと同じで恥」だったが、今では「生活保護受給者だからといって差別するな」と叫ぶ者が増えたため、農村部ではともかく都市部では恥ではなくなってしまった。失業者数自体は減っているのに生活保護受給者数が増えていると言うのは、そういうことが原因ではないかと思われる。
そんな中、今後も年収の低下は続くであろうし、近い将来補償金や消費税等による物価の上昇もあるだろう。結果生活困窮者は増大し、連動して生活保護受給者も増加、そうして増えた生活保護受給者に対する社会保障の為に増税…と、今のままでは生活保護受給者は拡大の一途を辿る。


綺麗事だけではなく、もっと確りと弱者救済について考えなければ、そう遠くないうちに国は破綻してしまう。
無条件での弱者救済の観念はすばらしいものであるが、私たちは神様でも仏様でもなく、弱者全てを救済するだけの能力は持ち合わせていないのだと言うことを謙虚に受け止め、可能な限りの措置に留めておくべきであろう。国民だけならまだしも、外国人の面倒まで見ている余裕は無い筈だ。

*1:ソース元が削除されていたため、googleのキャッシュにしている