コスト削減のための「アウトソーシング」をした結果…

企業が経費削減のためにアウトソーシングを行うのは珍しい事ではない。業務自体をアウトソーシングすることもあれば、携わる人だけをアウトソーシング(=派遣)にすることもあるし、1社だったものを各業務毎に分割させて、それぞれにアウトソーシングの形式をとるようなこともある。
アウトソーシングが何故コストダウンに繋がるかと言えば、複数の受託希望企業が存在し、その中で価格競争が行われるためである。決して「優秀な人材がその業務に特化することができるので、効率よく作業がまわせるため」ではないし、アウトソーシングする企業側もコスト面しか見ていない。企業が社員の評価が適切にできないからこそ、アウトソーシングに走るのだし。


例えば100000件のデータを打ち込む作業があるとする。
その仕事をA社は100万円で請け負えると言い、B社は50万円で請け負えると言う。A社は「これだけのデータの場合、打ち込みに1人月、確認に1人月はかかる。以前同じような仕事をした際には3人月かかりましたが、今ではノウハウがあるのでどうにか2人月でできます。」と説明するが、B社は「A社はこの業務に慣れてないようです。うちなら過去に同様の案件を100件以上こなした実績がありますから、確認まで含めて1人月ですみます。」と説明する。
この2社の言い分が全て正しかった場合、経験上、たいていの会社はB社に仕事を発注する。
しかしB社の実情はこうだ。B社は技術社員を10000名抱える大手であり、かつ人の出入りが1ヶ月に100人単位で行われていて、1年以内の離職率は60%を超え、3年以上居る人はいない。最近は採用基準を大幅に下げて人員の確保に躍起になっており、実務未経験者も多い。加えて、過去に受けた100件の作業は全て別の人が行っているので、企業としてのノウハウは無い。
A社は技術社員が30人規模の会社で、5年以上経験をしている20〜30代の技術者がその半分を占めている。3年未満の技術者は必ず先輩と組んで仕事をし、離職率が低い事も相まって各作業のノウハウが蓄積されている。
発注元企業はそういう企業の実情を知ろうとはせず、とりあえず価格の安いB社に仕事を発注する。結果は言わずもがな。


IT関係や土建関係はこういうことが多い。「うちは実績がありますから!」と毎度毎度一番安い下請けに丸投げするだけの元受や、「とりあえず実績がほしい」と仕事をせずに中間に入るだけの企業、「前にもやりました」と以前在籍していた社員の実績を元に受注する下請け。これが孫受け、玄孫受け…と延延と繰り返され、1億の仕事であっても最終的には3000万程度でしか受けられなくなる。
客にとっては「実績の無い企業に仕事を出すのは不安」なのかもしれないが、仕事をしている身としては「見かけの実績に騙されて大金払ってるけど、間が全く居なければもっと安くシステム開発できるのにね」と思う。まあ大企業がそうやって集めた金をバンバン無駄遣いしてくれるから自分の仕事があると思う部分もある。
が、1億円程度の仕事であっても、実際には1人で半年程度で開発でき、それも平日昼間からブログを更新できるほど余裕があったりする。もちろんこれは元受企業や弊社営業担当の営業努力と言え、下手な営業の持ってくるどう見ても無理なスケジュールでデスマーチに追い込まれている人が居るのも事実だし、そちらのほうが比率的には多いだろう。
お客が自前の開発者を用意していればこれほどの無駄遣いにはならないのだが、これも業務ごとアウトソーシングした結果だと言える。ちなみにこれの典型的な例として社会保険庁の年金システムが挙げられる。


そういった無駄遣いを削減して購入価格に反映させれば、私たちが購入する様様なものはもっと安くなるのではないだろうか。例えば最近話題の中国産の冷凍餃子など使わなくても、十分安くて安全で美味しいものが作れると思うのだけれど。