増税してまで社会保障が必要か?

基礎年金、全額消費税で・日経研究会報告」について。

 日本経済新聞社は、年金制度改革に関する報告をまとめた。少子高齢化の加速や保険料未納問題の深刻化で制度維持が難しくなりつつある状態を立て直すために、基礎年金の財政運営を社会保険方式から税方式に移行させるよう求めている。給付総額19兆4000億円(2009年度)の財源すべてを消費税で賄うことにし、保険料を充てている12兆円分を消費税に置き換える。このため税率を5%前後引き上げる。保険料は廃止するので全体の負担は変わらない。制度の持続性を確実にするとともに無年金者をなくすのが狙いだ。
 現行の公的年金は制度への国民各層の不信感の高まりに、社会保険庁による加入記録のずさんな管理が重なって保険料の未納問題が深刻化し、制度維持が危ぶまれている。福田康夫首相は年金改革を中心に社会保障制度を議論する国民会議を近く新設する。

wikipediaにみる社会保障消費税の項目も参照のこと。


社会保障と言うものが「貧困層の救済」と言う目的で行われる政策なのであれば、増税と言う殊更に貧困層を増やしかねない政策を推してまで維持しなくてはいけないものなのか、とても疑問です。


例えば年収200万(手取り150万程度)のギリギリの生活をしている場合、消費税を5%も増税することは、かなり大きな負担になるのではないでしょうか。確かに国民年金の負担分が減るとは言え、所得控除額が減ることで所得税・住民税が事実上増税されることになり、増税分だけ手取りが増えるとは到底思えません。
また「消費税の増税に伴い」と言う理由で各種商品の値上げも行われるでしょうし、ファーストフード店等の小銭のやり取りを極力控えているような店では増税額が数円程度だったとしても、10円・50円・100円単位での区切りの良い価格へと切り上げられるでしょう。薄利多売が身上のお店は低所得者がよく使うお店でもありますから、そういったお店が増税に関して数円単位での値上げを行うと言うのは、生活貧困者を増やす事になりかねません。結果、社会保障を受ける対象を増やし、より一層の社会保障が必要になります。その結果、税収分が足りなくなってまた増税されることになる恐れもあります。
また、年間の消費額が350万以上、1ヶ月に30万近く使うご家庭にとっては純粋に増税となります。夫婦で夫夫国民年金を支払っているのであれば年間550万以上使う家庭以外には減税と言えるかもしれませんが、未だ日本の家庭に於いては主婦・パートの割合が多い事を考えれば、大部分の人にとってこの内容が増税を意味すると言うのは自明の理ではないでしょうか。
「保険料が廃止になるから全体の負担が変わらない」と言うのは無理がある話です。


加えて、税の目的税化は多くの弊害を生みます。道路目的税を例に挙げれば分かりやすいですが、結局あるだけ使ってしまいます。道路目的税は「地方格差是正の為」に、そして消費税は「社会保障充実の為」に、どちらも「弱者の為に」と言うお題目で運用され、反対者には「地方の辛さが分からない」だの「強者の論理を振りかざす」だのとレッテルを貼って反論を封じ込めようとするので、男女共同参画の予算と同じく、また数兆円以上もの税金が聖域化されることになるのでしょう。
弱者の皮を被った利権の確保はいい加減止めるべきです。JASRAC等に代表される既得権益の保持者も同じように「利用者の心無い行為によって権利が侵害される」とし、様様な補償や権利の拡大を求めるのも同様ですね。


この不況の最中、先行きが暗い話を聞くのは嫌なものです。