WiiFitはWiiの将来を狭めたのではないか

http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20071213/143084/」について。

「インターフェースの変更=初心者を取り込む手段」ではない

 ゲームを楽しんできた人の声に従ってゲームを作ると、ゲームの中身は難しくなっていきます。これまでと同じものを作っても飽きられてしまうため、難しくせざるをえないからですね。すると新たにゲームに飛び込んでくるユーザーが減り始め、市場は先細っていく。過去に、さまざまなジャンルのゲームが生まれましたが、その中のいくつもが廃れてしまったのは、そのためです。1〜2年前まで、テレビゲーム市場そのものが右肩下がりだったのも、同じ理由からだと考えていい。


 でも、じつはこの悪循環、うまくリセットする方法があるんですね。


 まったく新しいコントローラーを提供し、そちらをスタンダードにしてしまえばいいのです。上級者と初心者の最大の違いは、極論するならば「操作に慣れているかどうか」に尽きる。だから上級者ですら「まだ体験したことのない入力デバイス」を用意してしまえば、技術の差は薄められる。すると初心者でも苦しまずに楽しめるゲームソフトが増え始め、新規ユーザーが獲得できるようになるのです。

この理由付けは全く的外れだ。もし上記のようなことが問題だとしたら、ファミコン発売時からXBoxまでのゲーム機の広がりが説明できない。
上記のような問題が発生するのは続編化されるゲーム特有の問題である。ストリートファイターDOA、三国無双などのゲームは、代が変わっても基本的な操作性が同じであり、だからこそそのゲームの続編と認知される訳だが、それが理由で経験者に有利になり初心者の取り込みが難しくなっていると言う点は否めない。
しかしそういった格闘ゲームの中であっても、コンシューマー向けの格闘ゲームはオリジナリティを持ったものも販売され、操作性の慣れによる差をその都度解消してきた。つまりコントローラーを変更するのではなく、入力するコマンドの変更によって新規参入者の誘導を計ってきたのだ。
初心者を取り込もうと頑張ってきたソフト会社の努力を無視するかのような発言は残念でならない。


また、操作性が変わったところで、既存するゲームジャンルにおいては、ある程度の習熟が必要で初心者の取り込みが難しいものもあり、一概にインターフェースの変更を行えば初心者に受け入れられると言う訳ではない。将棋や囲碁のようなボードゲーム、そして数数のカードゲームが慣れてないと勝てないのと同じように、テレビゲームも経験がモノを言う世界なのだ。
未経験者にとって敷居が高い、と言うのはある意味仕方が無いとも言える。

 タッチペンによる入力を採用したニンテンドーDS、リモコンを採用したWiiが、ともに初心者に受け入れられた大きな理由が、そこにあります。入力デバイスの一新で、ゲーム市場の先細りをリセットし、新規顧客を一気に取り込むことに成功したのだと考えると、分かりやすいでしょう。

DSやWiiが売れたのはハードの問題ではなくソフトの問題だろう。DSも脳トレが発売されるまでは既存タイトルの続編などが多く発売されており、新規顧客の取り込みに成功していたとは思えない。ユーザーにとっては「そのハードで何ができるのか」が重要なのだから。

専用コントローラーはWiiの可能性を限定する事に他ならない

 だから任天堂にとって、「Wiiフィット」のヒットの価値は、とてつもなく大きい。タッチペン、リモコンに次ぐ、さらに新しい入力デバイスバランスWiiボード」が市場に受け入れられたことは、またまた市場の先細りをリセットする武器を手に入れたこととイコールだからです。

と言う点にも賛成できない。
バランスWiiボードWiiの標準コントローラーとしてハンドルされているならまだしも、今後発売されるソフトに於いて「バランスWiiボード必須」と書かれているものが、どれだけ売れると言うのだろうか。専用コントローラーを使ったソフトが売れないとは言わないが、専用コントローラーを使ってできるソフトはその続編くらいなものではないか。
例えばファミリートレーナーDDRバーチャロンや太古の達人と言ったソフトの専用コントローラーを活用した別ソフトを私は知らない。ソフトメーカーの壁を取り去る事ができれば多くの可能性を引き出す事ができたかもしれないが…


Wiiは標準で独特なインターフェースを持っている。
にも関わらず、バランスWiiボードと言う別のインターフェースを採用したWiiFitを発売したという事は、ソフトメーカーがWiiリモコンの活用方向を見出せず、四苦八苦している事の表れではないか。ソフトメーカーにとってはこの30年近く続いてきたインターフェースを一新して新しいソフトを開発しなくてはならなくなったのだから、その苦労は私の想像を絶するのだろう。
だからと言って、新規インターフェースを用いて現状を打破しようとする行為は、愚手であった。
Wiiは「リビングに置いていてもかさばらない」のが利点の一つだったはずだ。であれば、バランスWiiボードの存在はWiiの利点を打ち消す事に他ならない。
そして今後、「Wiiリモコンの活用が難しいなら新しい専用インターフェースを作って販売する」と言うような流れを作る一因になる恐れもある。
それに専用コントローラーを使ってソフトを作るという事であれば、別にWiiでなくても良い。「Wiiらしさ」の象徴であるWiiリモコンを使わないという事は、自らを否定するようなものではないか。


クリスマス商戦に向けてWiiに何かしらの目玉商品が必要だったのかもしれないが、それがWiiFitだとしたら、短期的な売上の為に長期的な売上を捨ててしまう事になるのではないかと危惧している。
なので私としては、WiiFitのようなソフトが販売された事を素直に喜べない。