高速道路無料化の不必要性について

高速道路は無料にできる 地方が豊かになり日本は新たな発展ステージへ」について。


記事は「無料化できるかどう」かと言う点と「無料化のメリット」と言う2つの点について書かれているようだが、ここでは後者の部分に重点を置いて意見を述べる。


先日も書いたが、道路の無料化が地方の活性化になるとは思えない。その点については、この記事内のコメント欄にも書いて有る通りだ。

ご存知だろうか、関西に姫路バイパスがあったが、ここで一般車が200円の料金を聴取されていたのを、料金所を廃止して、無料にした。その結果どうだろう、通勤車やトラックが殺到し、朝夕は、大混雑となっている。また、事故も多発している。日本の高速道路を無料化するという人参をぶら下げるのは、うたい文句にはなるだろうが、実態を良くみて提案して欲しいと思っている。無料だからといって動かなくなった高速道に乗る気がしますか? 日本の高速道路がすべてが、一般道と同じ混雑となり、低速道路や駐車場と揶揄されない様、うまい所だけを考えずに、実態がどうなるかまで考えて提案、コメントして頂きたいと思ってます。

http://business.nikkeibp.co.jp/fb/putfeedback.jsp?_PARTS_ID=FB01&VIEW=Y&REF=/article/world/20071009/137073/

ラジオでもテレビでも良いが、道路情報について一週間聞いてみればわかる。はっきり言って、高い高いと言われている高速道路ではあるが、それでも利用者が多く、渋滞が日常茶飯事であることが分かるだろう。
それでも高速道路を無料化する事によってこれ以上高速道路の交通量を増やす事が、果たして意味の有ることなのだろうか。先ずはその点について議論すべきだろう。
個人的に利用する東北道(大泉-宇都宮)、中央道(八王子-甲府)、関越道(練馬-藤岡)は、何れも混んでおり、時間帯によっては渋滞も有る。東北道などは宇都宮まで国道4号線のバイパスができたのに、である。高速道路の無料化によってこれ以上の交通量が増えることがメリットになるとは思えない。


とは言え、無料化に伴う問題点については筆者も

 このように、財源だけ見れば全国すべての高速道路の無料化が可能です。しかし、首都高速阪神高速を無料にすれば、渋滞がひどくなるでしょう。そこでオプションもあります。


 欧米の一部で実施されているように、混雑緩和のために大都市部だけは料金を取ったり、時間や混雑に応じた料金の徴収をするロードプライシングを行ったりすることです。もちろん、料金は財政収入になります。


 首都高速阪神高速の料金収入は年間4300億円程度ですから、日本全国の高速道路における年間管理費5900億円の8割強をこれだけで賄えます。もちろん、今検討されている阪神高速での料金の大幅な値上げは必要ありません。

と案を出している。
結局、利用料金ありきでの高速道路維持なのである。これでは「今年は災害の影響で予想以上の維持費が必要だから料金の値上げを!」とか「渋滞緩和の為にもっと料金を上げなくては!」と言う方便がまかり通る事にもなり、無料化の政策を採ったところで、結局無料化になる事は無いだろう。


とは言え、高速道路の料金如何によって車の流れが変わるという事については異論は無い。

 ところが、羽田から高速とアクアラインでわずか20分で着く木更津は寂れたままです。木更津金田のインターチェンジを降りた辺りは、田んぼと未利用の造成地が広がります。1坪9万円、銀座のティファニーの土地の2000分の1です。


 羽田から20分のところに上海よりも安い土地があるのに放置して、日本企業は中国に出ていきます。片道4000円、値下げの求めに応じても3000円(ETC車は2320円)もする料金では使う人がいないのです。東京一極集中を象徴する格差です。

この点については私も同じ事を思っており、アクアラインの通行料値下げは首都圏の活性化に大きな意味をもたらすだろうと言う認識は有る。しかし、木更津は地方ではなく開発が遅れている首都圏であり、秋田などの地方都市と比べることはできない地理的優位性を持っている。木更津を例に挙げて地方を語り、同じような政策を全体的に採用しようとするのは詭弁だ。


料金如何によって交通量に差が出てくると言う点を逆手に取って考えれば、人為的に人の流れを作り出す手段が高速道路の料金設定であるという事に気付くだろう。
例えば渋滞する区間については料金を取り、年がら年中空いているような区間は大幅な値下げを行う(この点は筆者と同じ)、または使用するシーズンによって料金を変更するなどの対策を採ることで、今までとは全く違った人の流れを作る事や、「旅行をするならバスや電車がいい」と言うような意識変化をもたらす事が可能なのではないか。
ETCによる時間帯割引などによって実質的に利用時間帯の分散方法を採っているのだから、時期や区間によって料金を流動的に変更させる事は、技術的には不可能ではない筈だ。


つまり道路料金は国策上重要な意味を持つものであり、無闇矢鱈に無料化や料金低下を唱えるのではなく、人や物の流れを作り出す為の手段として、必要ならば上げて不必要なら下げるように、国が確り管理していかねばならないという事である。道路料金によって得た収益は国債の返済にでも充てればよかったのだ。その点に於いて、道路公団が民営化したことは愚策だったと思う。
自動車は輸送の一手段でしかないのだから、それが目的を達するのにあまり有効でないならば、別の手段を選べばよいだけのことだ。



ちなみに今後の高速道路のあり方について友人らと議論をしている最中、西武鉄道京王電鉄を例に挙げ、各高速道路株式会社が自らのインフラを利用した土地開発に乗り出せるようにする事が今後の道路行政に必要ではないか、という意見があった。
先ほどの木更津を例に挙げれば、高速道路会社が周辺一体の土地を買い、そこに様様な施設を建てることで企業や人を誘致すればいいのだ、という事。これによって高速道路会社は自らの資産価値を増やす為にもアクアラインの利用料金を下げるだろうし、高速道路の維持費や新しい道路の建設費を道路収入以外から捻出する事ができるようになり、それが結果として利用者の為になるのではないか、という事。
私もこの意見には賛成である。