痴漢は駄目でも殺人はOKらしい

【法廷から】飛躍した言い訳 痴漢した理由、「生い立ちが関係」?」を読んで。

 起訴状によると、被告は3月13日昼、JR有楽町〜神田駅間を走行する電車内で、女子中学生(15)の尻を左手で触った。罪状認否で被告は起訴事実を認めた。


 弁護人「なぜ犯行に及んだ?」


 被告「その場では頭が真っ白で何も分からなかったが、してはいけないと分かっていた」


 弁護人「犯行中は分からなかったとしても、今現在はなぜだと思う?」


 被告「ゆっくり考えたが、やはり幼いころからの生い立ちが関係していると思う」


 弁護人「生い立ちが関係しているとは、具体的にどういうこと?」


 被告「生い立ちが関係して、他人の顔色をうかがってびくびくして、人とうまくやっていけない性格になった」


(略)


 裁判官「あなたが大変だったことは分かるが、痴漢とは関係ないですよね。それを言い訳に求めるようではまたすると思う。(痴漢を)やりたいからやるんですよ。やりたくてもやらないのが普通ですよ。歯止めが利かない人がこんなところに(法廷に)来るんですよ」

私はこの裁判官の意見に同調する。


しかしこの考えは、一部方にとっては不満のようだ。光市母子殺害事件についてこう述べている方方が居る。

 報道は煽りばかりが目立つため知らない人も多いが、犯人の父親は、妻子への暴力が日常茶飯事だった。団地住まいであるため泣き叫ぶ声などから近所中に知られていた。幼い息子の目の前でその母親を執拗に殴り、怯える息子も見かねて止めに入ると今度は息子をぶちのめしたうえ風呂場へ引きずって行き水の入った浴槽に頭を突っ込み押さえつけるなど壮絶を極めた。母親の前に立ちはだかってかばったために、ぶん殴られて失神したこともあった。
 耐えかねた母親は自殺し、首を吊って脱力し糞尿を垂れ流してぶら下がる母親の無惨な姿を見ながら11歳の息子は泣きじゃくっていた。そのあたりから普段の言動に異常さが表れてきて、近所で「あの子はおかしい」「かわいそうだ」「父親があれでは」というような噂がささやかれていたところ最悪の事態となり、こうなる前になんとかしてやれなかったかと悔やまれていることが地元紙で報じられたことがある。
 こんな状態だから、少年はいつもおどおどしていて、学校ではいじめに遭い、あいかわらず父親の暴力は続き、高校生のときには鼓膜を破られた。最後の暴力は、あの忌まわしい事件を起こしてしまう前々日であった。つまり、逮捕されてやっと父親の虐待から解放されたのだ
 こんな事情があるのになんで最初から裁判で問題としなかったか。そう疑問に思う人たちから、最初ついた弁護士は責められた。けれども、被告が未成年者であるため親の意向に従わないといけなかった。だから言いたくても言えなかった。言えば被害者に知られて親の責任ということで損害賠償請求される。それを父親は恐れたというのだからひどい話である。弁護団を途中で離れた今枝弁護士も、前の弁護士がいいかげんだと最初は思っていたが、あとからこの事情を知って怒れなくなったとインタビューで言っていたほどだ。
 後から付いた安田弁護士らも、こんな事情を知って義憤にかられたというなら、そのしょうもない親父を証人として呼び出して厳しく尋問してやるべきだったのに、なぜしなかったのかと批判されている。いまさら遅いが。やはり少年事件であっても、親を吊るし上げることはやりにくかったのだろう。

子供ばかり責められるのはなぜか

 判決は「旧供述を翻した元少年の供述は不自然、不合理である。新供述と旧供述とは、事実経過や殺害行為の態様、殺意や乱暴の犯意の有無などが全く異なっている」として、元少年の供述を虚偽と断定したが、それほど単純に元少年(現在27歳)の心を割り切れるものだろうか。
 弁護団は「被告人の心を完全に見誤った」「18歳1カ月という未熟な未成年の犯行ということを真正面からとらえていない」と批判するが、最高裁は真摯に耳を傾けるべきであろう。


 「ドラエモンの声が聞こえた」とする元少年の供述は、常軌を逸している。
 だが、実父から虐待を受け、母親が自殺に追い込まれた環境で育った少年の心理としては、幻想や幻聴はありえないことではない。だから、常軌を逸した行動に走るのである。

光市母子殺害少年への死刑判決 社会的リンチの雰囲気を危惧する

元少年は、幼少時から父による虐待を受けてきました。父の虐待はひどいもので、殴る蹴るはもちろん、逆さまにされて頭から水風呂に沈めるなどの暴力もあったといいます。そして、「結婚して子を作ろう」などと言われるほど依存関係にあり、最愛の存在だった母親は、元少年が中学生のときに首吊り自殺をします。しかも元少年は、母親の首吊り自殺姿を目撃してしまったといいます。ごく普通の家庭に育った人間ではありません。生育環境は異常です。ですから、私たち普通の大人が、元少年がどんな精神状態で本件犯行に至ったかなど、想像のしようがありません。


山口家庭裁判所の調査官による「少年記録」には、被告人の「発達レベルは4,5歳と評価できる」とあり、生後一年前後で頭部を強く打っていることなどから「脳器質的脆弱性が存在するのではないか」などとも書かれているそうです。また元少年が勾留されている広島拘置所でも、統合失調症の治療に使う向精神薬が長期間多量投与されていました。


(略)


たしかに普通に聞いたら全く馬鹿げた言い訳であり、およそまともな主張とは思えません。ただしそれは、元少年が普通の18歳の青年ならばの話です。しかし、元少年は、幼少期から虐待を受けて、発達レベルも4,5歳という非常に幼稚な人格だとすると、上記のような馬鹿げたことを本気で思っていたのかも知れません。もしそうだとすると、それは私たち普通の大人の想像の域を超えるものです。

光市母子殺害事件死刑判決について考える

これらの発言に対して、上記の裁判官の台詞から「痴漢」を「強姦殺人」として引用して反論してみる。
「あなたが大変だったことは分かるが、強姦殺人とは関係ないですよね。それを言い訳に求めるようではまたすると思う。(強姦殺人を)やりたいからやるんですよ。やりたくてもやらないのが普通ですよ。歯止めが利かない人がこんなところに(法廷に)来るんですよ」
私はこの発現におかしいところが有るとは思えないのだが、彼らにとってはおかしいと感じることなのだろうか。