高速道路の無料化について再考

高速道路を無料化した時の弊害」に於いて、先日の日記についての反論が載せられていたので再考しつつ反論してみます。とは言え多くのコメントの内容を纏めた上で論点を絞った上で「無料反対の方に対する反論」という事になっていたので、私個人にあてたものではありません。そのため、私が主張した事のうち、取り上げられていたのは下記の点のみでした。

2.混雑の悪化
 これは、杞憂であると言ってもいいでしょう。渋滞発生の原因は、単に交通量が多いからではなく、その交通量を捌くに当たってボトルネックとなる箇所が存在しているからです。車線数の減少然りトンネル然り、これらは課金の有無とは独立して発生するものです。そんな中、料金所は高速道路における主要な渋滞発生箇所の1つであり、無料化によって料金所というボトルネックが解消されるのであれば、寧ろ渋滞の緩和に繋がる事になります。


 但し、首都高速道路のように構造そのものが欠陥になっている場合は、通行量による料金の抑制という発想も必要になってきます。しかし、この場合において課金の対象とすべきは首都高速道路よりも寧ろ一般道を含めた都心部全体であり、不要不急の自動車交通を都心部に招き入れないという観点が必要なのです。これは、高速道路そのものではなく都市交通全体に関わる話題であり、高速道路の無料化だけでは論じきれない課題でもあります。


 取り敢えず、通過交通が無駄に都心部を通過しなくて済むよう、バイパスや環状道路の整備は必要不可欠です。これは、「環境先進国」と言われるドイツにおいても同様であり、「都心部には自動車を乗り入れさせない」とする街では、大抵環状道路が整備されています。どうせETCのシステムが宙に浮く事ですし、今後ETCは高速道路よりもロードプライシングの分野においてこそ活用すべきでしょう。


先ず1点。

そんな中、料金所は高速道路における主要な渋滞発生箇所の1つであり、無料化によって料金所というボトルネックが解消されるのであれば、寧ろ渋滞の緩和に繋がる事になります。

と言う点です。

但し、首都高速道路のように構造そのものが欠陥になっている場合は、通行量による料金の抑制という発想も必要になってきます。

と、料金所の完全撤廃は実現しなさそうですし、元の記事においても

 欧米の一部で実施されているように、混雑緩和のために大都市部だけは料金を取ったり、時間や混雑に応じた料金の徴収をするロードプライシングを行ったりすることです。もちろん、料金は財政収入になります。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20071009/137073/?P=2

とあり、料金所の完全な撤廃は予定されていません。交通量の多い部分を緩和させる為に料金を徴収するという事は、交通量の多いところに渋滞要因を作ると言っているようなものです。
また交通のボトルネックは料金所だけではありません。大きなICを降りれば分かりますが、下道の絶対交通量が飽和状態になっている為に、高速道路を降りれず渋滞になっている、という事もままあります。料金所が無くなることで高速道路の利用車が増えた場合、この渋滞がより一層顕著になるとは考えられないでしょうか。


そして2点目。
無料化した際の道路維持費の財源についても語られていません。
一般道を走っていてもお分かりになる通り、道路は維持コストの掛かるものです。現在の道路会社の道路料金収益以外の事業収益は1%にも満たないものであり*1、道路維持費を捻出する事ができません。
アスファルトは走っているだけでも痛みますから定期的な補修は必要ですし、災害などで道路が壊れた際の復旧費、事故によるガードレール等の修繕費などをどのように捻出するのでしょうか。
例えば道路会社各社がJR東日本の事業のように、様様な関連事業からの収入を増やしていけるのであれば良いのですが、残念な事に制約された事業展開しか出来ない現状があります。
その点まで含め、道路の無料化の現実性について語る必要が有るのではないでしょうか。


3点目。

通行量による料金の抑制という発想も必要になってきます。しかし、この場合において課金の対象とすべきは首都高速道路よりも寧ろ一般道を含めた都心部全体であり、不要不急の自動車交通を都心部に招き入れないという観点が必要なのです。

自動車による物流を促す為に高速道路の無料化を論じながら、交通量の規制の為に一般道まで含めた料金徴収を行う事で流通量の抑制を図ると言うのは、些か矛盾しているように思います。
例えば輸送費をいくらかでも浮かそうと中央高速道路を使わず甲州街道(国道20号)を使って首都圏に乗り入れるトラックが結構多い事や、圏央道ができても八王子から岩槻あたりまで国道16号を使うトラックが後を絶たない事などもあります。



高速道路の無料化の目的が「人や物の流通を促進し、地方都市の活性化を図る」事だとするならば、重要なのはその目的自体です。
そして人や物は車だけで運ばれるものでは有りません。車は交通の一手段でしかないのです。
それを考慮した上で、地方を活性化させるための方法を考えるべきではないでしょうか。


ちなみに私は道路特定財源一般財源化するべきだと思っていますので、「余った道路特定財源を使って高速道路会社の借金を返済する」という事については反対です。