犯罪者に対する支援とは?

【法廷から】刑務所に出戻る男たち 使われる税金は…」より。

 疑問を解決しようと、調べてみた。法務省矯正局によると、受刑者1人当たりにかかる刑務所での費用は1日あたり平均約1310円。内訳は食費、服代、医療費など。平成19年度の国家予算は約500億円という。


 受刑者は裁判を経た上で刑務所に収容されるので、裁判での国選弁護人への報酬なども発生する。日本司法支援センター(東京都千代田区)によると、地方裁判所における軽犯罪の弁護は1回につき平均約7万円。被告の支払い能力などに応じて裁判所から返金を求められるが、被告に支払い能力がなければ国が負担する。19年度の国家予算は約100億円という。

一応数値的な裏づけを調べてみると、法務省の予算案を見ると、矯正局・保護局の予算合計が500億超になることから、受刑者に対する国家予算500億と言うのは妥当に思う。
が、「法務省 平成17年版 犯罪白書のあらまし〈第2編〉 犯罪者の処遇」によれば、

 行刑施設の1日平均収容人員は,平成5年以降増加傾向にあり,16年は7万5,289人(前年比4.7%増)であった。このうち,受刑者は6万2,641人(同6.0%増),未決拘禁者は1万1,686人(同3.0%減)であった。

の為、私の計算では受刑者1人につき1日当たり1820円程度と出た。
まあ参照している資料が違うのだろうが、500円の差を大きいと見るか小さいと見るかは見方次第だろうし、そもそも本題とは余り関係が無い。
少なくない金が受給者の為に使われている、という事が抑えるポイントである。
つまり、受刑者が少なくなるという事は受刑者の為に使う額が減るので、税金を無駄に使わないためにも受刑者を減らそう、という事。

 2人の被告はお互い無関係だが、いくつもの共通点があった。ともに無職で43歳。そして2人とも同じ罪で20代の時から複数回服役し、しかも刑期が満了してわずか数カ月で再び同じ罪を犯すということもあった。

とまあ、繰り返し刑務所にご厄介になるようでは、確かに筆者のいう事も分かる。
しかし、

 自分を弱いと自覚する彼らを叱咤するだけでは、問題の解決にはならない。彼らを疎外せず、厳しくも温かく見守る周囲の人々や社会の支援も、必要ではないか。彼らの再犯防止が、むなしい血税の使用にも歯止めをかけるのだから。

と言う点については、些か難しい点が有る。
確かに自分と関係の無いところに限って言えばこういう事を言いたくはなるのだが、実際に自分の家の隣に犯罪者が住む、という事になったらどうだろうか。
筆者の発言は余りにも無責任だと言わざるを得ない。
例えば、私は男でもあるので、強姦罪の罪を償って出てきた元受刑者が住んだとしてもあまり意に介さないとは思うが、もし妻や娘がいたとしたら、そのような経歴を持った方が隣に住む事に不安を覚えずにはいられない。
また、強盗殺人などの罪を償って出てきた方については、問答無用で隣に住む事をご遠慮いただきたく思う。


もちろん、その犯罪が冤罪だったと言う可能性も有るだろうし、運転中の業務上過失致死など悪意の無い過失で服役しいた方も居られるだろうから、一概に全ての元受刑者について拒否反応が有るわけではない。
自分の立場を考えた上で、その人が自分にとって潜在的な恐怖となりうるかどうかがポイントなのだ。
人の評価は過去の行いによって下されるものである。
「この人は今まで約束を守ってきた」「この人は仕事で結果を残してきた」等の過去の行動が評価され、信頼に繋がるのである。
当然、「この人は今まで約束を守った事が無い」等が信頼を傷つける事にもなるり、「この人は罪を犯した」という事もその人を信頼できない一要因になっても仕方が無いだろう。


人は、信頼によって自分との距離を設定する。
信頼できる人とは近くにいたいし、信頼できない人はなるべく遠ざけておきたい。
「君子危うきに近寄らず」という事場が有るように、危険だと思う場所に態態踏み込むのは思慮が足りない事である。
そして危険でないと判断する基準は、対象のものをよく理解した上でそれが信頼できると判断できるかどうかである。
よく知らず安全だと妄信するのはこれまた思慮が足りない。
そう言う意味では、「元受刑者である」と言う肩書きのみで相手を判断する事こそ思慮が足りないとされるべきところではあるが、人生には限りが有るため毎回その判断の為に時間を割く事ができず、一定の経験則に沿った上で物事を判断せざるを得ないのは仕方が無い。
だからこそ信頼と言う言葉には意味があり、それを培う為に人は様様な努力を強いられるのだ。
そういった努力をしてこなかった人に対して、いきなり「信頼して一緒に過ごせ」と言われてもできるものではない。


では受刑者が信頼を勝ち得る為にはどのようにしたら良いのか?
簡単な事ではないが、例えば刑務所の中ではどのようなことをしているのか、という事をもっと公開するなどしてはどうかと思う。
そうすれば見学者が受刑者に対する偏見を減らし、「こういう事をやっているなら社会復帰しても問題ないだろう」とか「二度と間違いを起こす心配は無いだろう」と言う、一定の信頼を得る事も可能かもしれない。
とは言え、受刑者のプライバシーやらを保護する必要も有るし、見世物のようになってしまって逆効果になる可能性も有るため、おおっぴらに大人数を受け入れる事はできないだろう。
とは言え、「刑務所を見学したいのですが、可能だとしたら、どこから申し込むことができるでしょうか?」にあるように、現在でも一応見学申込をすれば対応してくれるところも有るようだし、一度見学してみるのも良いかもしれない。
それを踏まえたうえで、「元受刑者」と言う過去を持つ人について判断できれば、と思う。