報道された時系列に従って列挙してみると、それなりに面白い流れにも感じる。

2008.1.22 11:51 暫定税率の維持はなんとしてでも阻止と主張。

 国会は22日午前、前日の衆院に続き参院本会議でも福田康夫首相の施政方針など政府4演説に対する各党の代表質問を行った。参院第1党の民主党輿石東参院議員会長は、3月末に期限が切れる道路特定財源である揮発油(ガソリン)税の暫定税率維持を含む歳入関連法案(日切れ法案)について「総力を挙げて(成立を)阻止する」と述べて徹底抗戦の構えを示し、与党が同法案を衆院で再議決・成立させた場合には「首相の問責決議案提出も辞さない覚悟だ」と迫った。


 首相は日切れ法案の年度内成立を目指す考えを改めて示し、民主党暫定税率廃止の代替措置として主張している国の直轄事業の地方負担金廃止について「仮に直轄事業負担金を廃止しても引き続き国の負担で事業を行えば、国・地方全体としての道路財源は半減することに変わりなく、暫定税率廃止に伴う財源問題の解決策とはならない」と反論した。

ガソリン税の税率について、最近暫定税率であるという事を知った方も多いのではないかと思う。そもそもこれは私が生まれる前から成立していた法律であり、私にとっては「暫定」である感覚が無い。ちなみにwikipediaによると、ガソリン税揮発油税は厳密には違い、「ガソリン税=揮発油税+地方道路税」という事らしく、ガソリン税53.8円/Lの内訳は地方道路税5.20円/Lと揮発油税48.60円/Lとなる。民主党は「暫定税率を廃止すれば1Lあたり25円の減税」といっているので、対象は揮発油税ではなく地方道路税まで含む事に注意したい。


2008.1.22 13:12 福島県知事らが暫定税率撤廃に反対

 全国知事会長の麻生渡福岡県知事は22日の定例会見で、揮発油税暫定税率延長問題について「延長しなければ福岡県も、道路補修などをほかの予算から回して行わなければならなくなり、財政は本当に危機的になる」と述べ、暫定税率廃止を主張する民主党を改めて批判した。


 麻生知事は「毎年500億円ある道路関係の県債返済も賄えなくなる恐れがある」と指摘、平成23年全線開通予定の九州新幹線鹿児島ルートについても「駅へのアクセス道路がつくれない」などと影響を訴えた。

これを読むと暫定税率の打ち切りに反対するのは分かる気がするが、地方への財源移譲が進んだ結果、福岡県の財源を見ると、地方譲与税地方交付税などの大幅削減にも拘らず今年度200億円の増収となっている。とは言え、その分総務費と保健福祉費の予算がそれぞれ100億前後増えていて、各部の増減をあわせてトータルで100億程度歳出予算が増えている。
そもそも証券教育広報センターの資料によると国民の年収はここ数年右肩下がりの状況が続いているのが現状。不況不況と県民があえいでいる中、1700億もの県債を出しつつ(ほぼ前年並み)、かつ歳出が増えていると言うのは、そもそも県の財政構造自体に大きな問題があるといわざるを得ない。
また知事の発言ではないが、暫定税率がなくなっただけで受ける影響が175億と言う試算にも疑問が残る。

 また福岡市の吉田宏市長も同日の定例会見で、暫定税率が廃止された場合の市の影響総額を約175億円と試算した上で「影響が大きく、暫定税率の廃止には反対だ」と述べた。

暫定税率が撤廃されればより厳しい財政事情になるのは当然なので反対する理由は分かるが、それよりも知事は先ず県財政の健全化に勤めるべきだろう。


2008.1.23 02:13 民主党が戦術変更

 民主党は22日、ガソリンを含む揮発油税暫定税率廃止問題で戦術を変更し、「ガソリン代値下げ」の代わりに、道路特定財源一般財源化などの制度改革に重点を置いて訴えていく方針を固めた。同党は、暫定税率廃止でガソリン1リットルあたり約25円の値下げをするキャンペーンに力を入れてきたが、人気取りとの批判に押され、「逆効果となってきた」(幹部)と判断した。


 民主党は中堅・若手衆院議員らの「ガソリン値下げ隊」を結成し、ガソリンや軽油の高騰が国民生活を圧迫しているとして、各地でガソリンの値下げを前面に打ち出した街頭キャンペーンを展開する腹づもりだった。


 だが、政府・与党から「どうやって財源を確保するのか。(平成20年度予算や関連法案の)成立が遅れれば、国民生活は混乱し、経済に打撃を与えかねない」(伊吹文明自民党幹事長」などと反撃を受けている。


 このため、「値下げキャンペーンだけ続ければ、世論の風向きが変わる恐れもある」(ベテラン)との声が党内に広がり、党幹部は22日、「25円引き下げのキャンペーンは、国民に暫定税率問題へ目を向けてもらったことで役割を果たした」として、戦術を変更していくことを明らかにした。


 民主党暫定税率廃止を求め、ガソリン代値下げの主張を封印することはない。だが、今後は、党税制調査会が検討してきた地方自治体の減収分の財源確保策の説明に力を入れる。


 さらに「無駄な道路建設の原因となっている道路特定財源は、国土交通省を使った利権構造の根源。だから、与党は(使途を限定しない)一般財源化に踏み切れない」(幹部)として、すでに民主党として決定済みの道路特定財源一般財源化などの制度改革を重点的に訴えていく。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080123/stt0801230213000-n1.htm

とは言え、暫定税率撤廃と言う意思には変わりがない。与党からも「結局やっていることは同じ」と批判される。

 これに対し、政府・与党は「民主党の主張に変わりはない」(閣僚経験者)として、反論を強めていくものとみられる。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080123/stt0801230213000-n2.htm

民主党が人気取りの為に財源の無い政策を打ち出すのは今回に限ったことではないのでさほど驚くべきことではないのだが、一度掲げたスローガンを変更するのは珍しく感じる。まあ「ガソリン値下げ国会」などと言う名前で無くなったのは有りがたい。


2008.1.23 09:12 和歌山県知事も反対

 国会で与野党が対立している道路特定財源暫定税率の存廃問題をめぐり、和歌山県仁坂吉伸知事は22日、「(廃止されれば)直ちに歳入欠陥となり、県の新年度予算に破滅的な影響が出る」と述べ、廃止になった場合の影響について広く県民に訴える考えを示した。


 県によると、暫定税率が廃止されれば年間でそれぞれ県は約120億円、市町村は約50億円の減収になる。仁坂知事は、暫定税率の延長を前提に新年度予算案を編成しているため、「廃止になれば結果的に県の道路予算700億円のうち400億円が執行不能になる」と強調した。さらに、暫定税率廃止によるガソリンの値下げを主張している民主党に対しては、聞こえがよい口実で政局にしているとして「卑怯というか節操がない」と手厳しく批判した。


 仁坂知事は今後、県民との対話集会を開き、暫定税率問題についての理解を求める。また県や市町村などでつくる県道路協会が「地方のチャンスを奪わないで」などと訴えるチラシを約120万円かけて50万部作製し、全戸配布する方針。県市長会と県町村長会も、各首長が住民向けの広報活動を行うという。

徳島県の財政状況も福岡県のパターンと似たり寄ったりで税収が160億も増えているのに、その分歳出も増えている。加えて県債発行額も60億ほど増えていたりするので余計性質が悪いとも言える。地方に移譲された財源分があれば暫定税率廃止分の収入源を十分賄える金額ではないか。「直ちに歳入欠陥」となるのは知事の努力不足としか言いようが無い。
地方へ財源移譲した結果が「より多くの借金」だとしたら、負担している私たちの不満が募るのも仕方が無いだろう。各県知事が「政府が悪い」「東京(大都市)が悪い」と言うのは勝手だが、県知事の努力の跡が見られないのでは、協力することもできないではないか。


2008.1.23 20:08 地方議員も反対

 揮発油税など道路特定財源暫定税率維持を求める都道県議会議員らが23日、東京・永田町の憲政記念館で総決起大会を開き、暫定税率廃止を求める民主党への批判が相次いだ。44都道府県の県議ら約440人が出席し、来賓として自民党国会議員49人のほか、暫定税率廃止を主張する民主党からも参院議員3人が出席した。


 この大会は「道路特定財源堅持を求める総決起大会」(発起人代表・佐々木雄三島根県議)で、都道府県議は自民系356人、公明系28人、民主系19人など。佐々木氏は、民主党などが暫定税率廃止や道路財源の一般財源化を唱えていることを念頭に、「国会では寂しい議論が行われている。特定財源の意義と理解を広めないといけない」と指摘。石原慎太郎都知事は「道路整備が頓挫したら国がマヒする。どこかの政党は相変わらずポピュリズム大衆迎合主義)だ。頭を冷やして考えた方がいい」と語った。


 また、県議らは「地方は道路が命の次に大切だ」「ガソリン値下げの意見は、財源を示さなければ国民をあざむく行為だ」「地方の財源不足の穴埋めは福祉、教育、環境の財源でしないといけない。道路だけの問題ではない」などの声が相次いだ。


 来賓の民主党大江康弘参院議員は「細川内閣当時、(野党だった)自民党は責任政党として(暫定税率維持を含む)日切れ法案に賛成した。今日の熱意が伝わらないなら民主党はKY(空気が読めない)政党だ。国民に迷惑をかける党は生活者優先ではない」と述べ、所属する民主党の動きを批判した。

良いアピールになるのだろうが、こういうのはどうも気に食わない。
そもそも「地方は道路が命の次に大切だ」と有るが、政府は地方鉄道の「公有民営」営業制度の導入を目指す等、地方の足の確保に力を入れる姿勢を採った。道路のみが地方の足であると言った考えは捨て、既存のインフラを活かして何ができるかを考える時期に来ているのではないか。
どうも議員の方方の頭の中は相変わらず高度経済成長の記憶が抜けないのか、「作る事が正義」だと思いすぎている帰来が有る。まあこの感覚は道路に限らず各種システムなども同じで、作ってしまってハイソレマデヨ、と言う無駄遣いが多い。まあ「作った人」と「使う人」が別だから仕方が無いのかもしれないが、税金を使って作る物に対してそう言う姿勢は拙いだろう。
しかしまあ「道路の財源を確保する為に福祉や教育を犠牲にしなくてはいけない」という事をよく言えたものだ。どちらが優先されるべきことなのかという事を理解していない政治家の方は、即刻辞めていただきたいものだ。「代替の財源を示さないと国民を欺く行為だ」と言うが、財源とは結局税金ではないか。「道路建設ありき」でしかものを考えられないのはあまりにもお粗末過ぎる。
「活用する事が正義」と考え方をシフトチェンジし、場に合わせた産業を興すべきだと思うのだが、農地法がある限り大規模農業を営めない現状、なかなか難しいのかもしれない。さっさと農地法を改正して相続税も撤廃し大規模農家を経営できるようにすれば、地方の産業は劇的に変化して大都市への一極集中も緩和されると思うのだが…まあこの議題はまた。


2008.1.23 20:46 で、民主党が造反者対策で苦慮する事に

 都道府県議らが23日に開いた「道路特定財源堅持を求める総決起大会」には、民主党から参院議員の大江康弘渡辺秀央、山下八洲夫の3氏が参加し、民主党暫定税率廃止、道路財源の一般財源化の方針に反対の態度を表明した。暫定税率維持を含む歳入関連法案の参院採決で造反が出る可能性が浮き彫りになり、民主党執行部は党の方針への同調を促す構えだが、対応に苦慮しそうだ。


 「わが党の案はむちゃくちゃだ。このまま選択肢がなければ政府案に(賛成の)意思表示をさせていただくことになる。可決されないと意味がないから、(同調する)人数を確保しないといけない」


 大江氏は、総決起大会後、記者団に「造反宣言」を行った。大江氏は民主党道路特定財源に関する小委員会の座長で、昨年末、同党が税制改革大綱で一般財源化と暫定税率廃止を盛り込んだときも反発していた。


 渡辺氏も同日、国会内で民主党暫定税率廃止案を「絵に描いたモチだ。党税制調査会がまとめた自治体への財源手当は、重箱の隅(すみ)をつつくようなもので到底足りない」と批判した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080123/stt0801232046005-n1.htm

ちなみに上記3名はそれぞれ地元が和歌山・新潟・岐阜らしい。

 大会には、渡部恒三最高顧問ら民主党議員7人が招待されたが4人は出席を避けた。大江氏らに対しては、民主党内からは「自民党と同じ道路族議員だ。一般財源化こそ改革じゃないか。ガソリン値下げのどこが悪い」(衆院若手)との反発が出ている。


 だが、「暫定税率の廃止で、道路事業費が減るのを危ぶむ自治体関係者の意向をまったく無視するわけにいかない」(参院若手)と苦慮する議員もいる。23日の参院議員総会でも「財源を自信を持って説明できるようにしてほしい」「執行部は地方に出向いて説明すべきだ」との要望が出た。執行部の対応が遅れれば、党内が混乱する可能性もある。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080123/stt0801232046005-n2.htm

基本的に都市部が支持基盤だからこそ地方出身議員との軋轢が生じるのも仕方が無いのかもしれない。



「撤廃か継続か」ではなく、段階的に縮小と言う案は取れないのだろうか?
石原慎太郎氏の言葉を借りれば「理念の実現には現実的な手立ての積み重ねが要る」だ。期限が迫っているからと言って「採択しない」と言う方法でいきなり0にするというのは現実的ではないと思う。暫定であることを念頭に、段階的に税率を縮小(5年掛けて5%ずつ減少させるなど)すると、ある程度の見通しを立てて減税に取り組む姿勢をみせれば、民主党に対する評価も「大衆迎合主義」などと言われることはなかろう。
現在の税率について納得しているわけではないが、唐突な税収減は国債・地方債の発行額を増やす事になりかねず、却って首を絞める事になる。税率を維持して先ずは歳出を削って債務を返済し、段階的に可能な範囲で税率を下げていく、という改革こそ議論すべきではないか。
つまり、民主党が本当に議題とすべきは税率問題ではなく予算案であって、ガソリン税暫定税率ではない。その事に早く気付いてさっさと条件付で暫定税率法案を通すよう、党内の意見統一を図るべきだろう。


ま、今大阪知事選挙をやっている手前、「国民の事を考えていますよ」と言う分かりやすい民主党色を表示しておきたいだけなのかもしれないが…そう言う姿勢や、内部統制が取れていない事を露呈させてしまったりする事が、とても国政を任せられると信ずるに値しないことを表しているだけのように見え、却って逆効果にしか思えない。